鍋が恋しい季節。でも鍋って…誰かが作って取り分けてくれないと食べられないですよね(高級店は除く)。あなたは、率先して菜箸を手に取る女ですか? そこには世代間のギャップも大きいようで…。

上司A「おっ、鍋が来た! やっぱり冬は鍋だよね」
部下B「水炊きですね、いいですねぇ」
店員さん「こちら、お熱くなりますので火の扱いにはご注意ください(シュボッ)」
上司C「あー、だしのいい香りだねぇ」
店員さん「おだしが沸騰しましたら、鶏肉から順にお入れください(去る)」

(一瞬の間)

ARIA「あっ、私やりまーす」

男女の飲み会で、つい鍋奉行的な動きをしてしまう女

 忘年会、新年会が続く季節だ。とあるアラフォー女子が「河崎さん、私たちいつになったら鍋奉行を卒業していいんでしょうかッ?」とワインのグラスを握りしめながら訴えてきたので、思わず「アナタ、いいひとですねぇ」と答えた。

 鍋奉行なんて本当はしたくない。営業の接待じゃない、身内や友人同士の飲み会ならなおさら、他の人たちみたいにまったりと座り込んで、他の気の利く誰かから「はいどうぞ」と次々おいしい食べ物を差し出されたい。

 でも、でも、つい空気を読んで「この場で一番、鍋奉行をすべき立ち位置にいるのは私なんだろうなぁ……」と、菜箸を手に取ってしまう自分がいる。

 それがみんなの本音じゃないのだろうか。私はそれが本音だ。

 周りの優しい人たちの好意に甘んじて餌付けされたい。おいしい酒をまったり飲みながら、ずーっと餌付けされていたい。だからたいてい、菜箸からは一番遠いところにいる。取り分ける役なんて、お母さんとして自宅で家族相手にさんざんやってきたから、もうおなかいっぱいなのだ。私が飲み会で菜箸を取るときは、自分がシメを食べたくなったのに、まだ誰もうどんや雑炊を作っておらず、仕方なく炭水化物を鍋に投入してちょちょいと混ぜるケースだけである。そして酔って忘れて煮詰めて焦がす。いっそ手なんか出さないほうが世のためである。

 アラフォー女子は続ける。

「取ってもらえるのが当たり前」的な男子がメンバーにいたりすると、さらに違和感は増しますよね…
「取ってもらえるのが当たり前」的な男子がメンバーにいたりすると、さらに違和感は増しますよね…

 「鍋奉行くらいのことで『気が利くいい女』って思われるならそれもアリ? って思う自分も、これまではいたんですよ。でも最近、いい加減そういう立ち位置の自分に飽きてきたというか、同時にそういう立ち位置をキープする周囲の人にも疑問が湧いて。鍋奉行を買って出る女が存在するから、いつまでたっても日本は変わらないんだ! なんて自分も出てきて、大根や白菜やネギの火の通りを確かめながら頭の中がグルグルしているんです」

 私はもう一度答えた。「アナタ、本当にいいひとですねぇ」。こういう優しい人がいてくれるから、私のような浅ましい人間が飲み会で飢え死にしなくて済んでいるのですありがとう。

 そもそも、鍋奉行って、女子じゃなくてもいいよね?