40歳未満の人にはピルという選択肢も

―― 女性ホルモンを足すという意味では、低用量ピルとHRTは似ている気がするのですが、違いを教えてください。

高尾 低用量ピルにもエストロゲンとプロゲステロンの2種類の女性ホルモンが含まれていますが、低用量ピルに含まれるエストロゲンの強度はHRTの約6倍です。ピルの作用によって排卵が抑制され、子宮内膜が厚くならないので出血をごく少量にコントロールできます。一方で、HRTの場合は基本、更年期以降の変化に対する治療法です。

 更年期は特にエストロゲンの分泌にアップダウンが起こるので、生理周期のバラつきや突然の大量出血が起こる可能性もあります。しかし、ピルを服用していればこうしたことは起きません。

―― ピルを飲んだまま閉経を迎えれば更年期を緩やかに過ごすことができそうですがどうなのでしょうか?

高尾 ピルを飲んで更年期を迎えるのは最も理想的と言えるかもしれませんね。ただし、ピルには血栓症のリスクを高める副作用があり、ピルの飲み始めが40歳未満でないといけません。とはいえ、血栓症のリスクが高くなるのは飲み始めの数カ月間だけなので、若い頃からピルを飲み続けてきた人なら、総合的にリスクを判断し、40歳をすぎて服用するのは心配ありません。ピルを続けて、閉経を迎えたことを確認したら、HRTへと移行する人もいます。

 既に40歳以上の人はピルを飲み始めることはできないので、ピル以外のHRTを含む選択肢になります。いずれにしても、更年期症状の対策にはいろいろな方法があります。それぞれのメリット、デメリットについて説明をよく聞き、自分に合うものを選んで、更年期を快適に過ごしてほしいと思います。

取材・文/中島夕子 写真/鈴木愛子