誰か新しい人と出会って、結婚したいわけじゃない。でも、これまで頑張ってきた分、ふと思うのです。これからの人生を一緒に歩むパートナーが欲しいって。

 「志穂さんは色白で、目が大きくて美人ですねぇ」
 「大きな娘さんがいること、忘れてましたー」
 「僕、志穂さんのこと、触りまくりですよね、ハハハッ」

 整体の施術中だ。触られまくるのは当然で、相手は商売だからリップサービスで言ってることも分かっている。その場は軽く受け流すことができても、後で必ず「どういうつもりで言ってるの!?」と混乱して、キー! となってはウゥ……となって、期待をしたり、自分をなだめたりと、家で身もだえした。

 行きつけの整体院で出会った年下の先生を好きになるなんて、よくある話過ぎて笑ってしまう。でも、笑って済ませたくないのも私の本音だ。去年の夏にラインを交換して、毎日のようにやり取りしていた。牛丼やラーメン屋などの色気のないご飯屋ばかりだったけど、一緒によくご飯も食べに行った。「相談したいことがある」と言って私の家まで来て、家の前で深夜まで立ち話したことも数知れないのに……。

志穂
(仮名・41歳・バツイチ独身・子あり・電機)

 「いったい、どういうつもり? 私のこと、どう思ってるの? 思わせぶりな態度はやめて、はっきりしてよ!」

 こんな、気の強い女子高生が優柔不断な男子に詰め寄るような「青い気持ち」に、バツイチで40過ぎてもなれることが、ちょっとうれしかったりもする。

 これまでにいろいろあって、いや、いろいろあり過ぎて、男性関係についてはどこか「終わった」気になっていたからだ。

 私が結婚したのは20歳の学生のとき。相手も2歳上の学生だった。いわゆるデキ婚で、出産と子育てのために休学と留年を計4年し、娘が保育園を卒園すると同時に大学を卒業した。そして、娘が12歳のとき、私が32歳のときに離婚。経済的な理由から、娘は元夫と暮らしたが、学校行事には私も必ず顔を出し、部活の試合の応援にもよく行った。

 その娘も、既に成人して大学に通っている。友達のように話題のお店の情報をやり取りし、スイーツを並んで食べたり、お酒を飲みに行ったり。付き合っている彼氏とのことや進路相談など、割となんでも話してくれるし、私も自分が母親という立場を忘れていろんな話ができる。でも、離婚後に付き合ったあの彼とのことだけは、ほとんど話していない。