誰か新しい人と出会って、結婚したいわけじゃない。でも、これまで頑張ってきた分、ふと思うのです。これからの人生を一緒に歩むパートナーが欲しいって。

 英明さん(仮名)は、本当に私のことを好きなんだろうか。私のことだけを見てくれているのだろうか。ほれっぽくて浮気の前科がある彼に対して、ついそんなふうに疑いのまなざしを向けてしまう。

 そのたび、自分に嫌気が差す。50歳を過ぎても、恋愛でつまずくなんてばかみたいだ。もしかしたら私は、元夫と20年以上セックスレスだったせいで女としての自信が持てなくなってる? そんなふうに過去をほじくり返しては、他に私を好きになってくれる人を探したほうが、幸せの選択肢は広がるに違いないと思ったり。

 「でも……、欲しいものしか欲しくない」

 私が彼を好きだからいい。一番そばにいてほしいのは英明さんしかいない。だからきっと、これでいいんだ。

真理子
(仮名・54歳・バツイチ独身・子どもなし・ショップ経営)

 英明さん(59歳・実業家・バツ2)と出会ったのは、5年前。彼も私もスポーツカーが好きで、車好きが集まる会で出会って意気投合した。すぐに付き合い出して仲良くやっていたが、1年後、彼が他の女性に心移りして別れた。相手の女性は40歳前後で、一流大卒の経営者としてメディアからも注目される人だった。私より年下だけど、経営者としては格上で「負け」を認めざるを得ない心境だった。

 しばらくして、私も知り合いの経営者(55歳)と付き合い始めた。経営者として憧れの人だったから、付き合えることになってうれしかった。でも、長年の過労がたたったのか、彼は急逝してしまった。ちょうど同じころ、風の便りで、英明さんの彼女も交通事故で亡くなっていたことを知った。

 その彼女とは、英明さんと別れるきっかけになったあの彼女だ。でも、そんなことはどうでもいいと思った。パートナーを失うつらさは、経験したことがある者にしか分からない。