誰か新しい人と出会って、結婚したいわけじゃない。でも、これまで頑張ってきた分、ふと思うのです。これからの人生を一緒に歩むパートナーが欲しいって。

 仕事で散々、男扱いされてきたから、男扱いはおなかいっぱいだ。女扱いをされたい。「素」の私は淋しがり屋で甘えたいタイプだから、いっそ女の子扱いがいい。

 今付き合ってる4歳下の彼とは遠距離恋愛で頻繁には会えず、私が電話で不安を口にすると、「俺が守るから」と言ってくれる。俺が守るから――なんて甘くてうっとりできるフレーズだろう。仕事の愚痴をこぼせば、「稼ぎは俺がなんとかするから、無理して働くなよ」と言ってくれる。彼と結婚する気はあるけど、養ってもらう気はない。

 でも、「俺が守る」というような言葉をかけられるたび、ふぅっと体の力が抜けて、心がほわっと緩む。ずっと男性社会で肩肘張って生きてきたから、その瞬間ほど幸せを感じることはない。それでも、今の仕事を捨て、彼の住む町へ走る気はなくて……。

頑張って生きてきたからこそ、「俺が守る」という言葉に心が溶けていく
亜希子
(仮名・52歳・シングルマザー・コンサルタント)

 部下に厳しく言えば、「あれだから嫁として務まらないんだよ」と男性社員に陰口をたたかれた。女性社員は「私はあそこまでできない、ムリ~」と。そんな嫌みにめげず、男性社会で生き抜くために男っぽく振る舞い続けた。そうしないと昇進会議で名前を挙げてもらえない。90年代の初めに社会に出て、キャリアを積み上げるにはそこまでする必要があったのだ。

 キャリアは全力で守らないと守れない。シングルマザーの私は、そう思う気持ちが人一倍強かったのかもしれない。

35歳で見限った、いつまでも頼りない夫

 結婚したのは21歳、大学3年生のとき。相手は10歳年上のクリエイターだった。できちゃった結婚だったから、出産のために1年休学して大学を卒業した。母になってどんどんしっかりする私と、10歳上でも、経済的にも家事分担的にも頼れない元夫。いつの間にか私の稼ぎが上回り、ただ世話がかかるだけの彼に見切りをつけたのは、35歳のときだった。