誰か新しい人と出会って、結婚したいわけじゃない。でも、これまで頑張ってきた分、ふと思うのです。これからの人生を一緒に歩む“本物の”パートナーが欲しいって。

知世さん(仮名、43歳、外資系営業、既婚、子ども3人)

 縁があるから出会えたのか、縁がないから一緒になれないのか――。

 和彦さんは、大学時代に付き合っていた隆の先輩だった。隆に初めて紹介されたとき、妙に気持ちがざわついて、苦手なタイプだと思った。1つ上で、先輩風を吹かせているわけでもなく、カッコつけているわけでもないのに、なぜかそう思った。今となっては、苦手なタイプにして避けないと好きになってしまいそうで、自分で自分の気持ちにセーブをかけていたんだと分かる。隆の手前、好きになってはいけない相手だったから。

 その後も街中でばったり会ったり、私がけがをして落ち込んでいるときにたまたま電話をくれたり。つかず離れずの距離感がずっと続き、和彦さんには不思議な縁を感じていた。大学を卒業後、思いがけず「付き合おう」と言われたとき、初対面のときの思いを伝えたら、和彦さんは「やっぱりね」という顔をした。そして、「俺は、なんで俺じゃないやつと付き合ってるの? 俺はここにいるけど、と思っていた」と言った。彼も不思議な縁を感じていたようで。

 晴れて付き合えることになったが、商社勤務の和彦さんは海外出張が多く、半年で会えたのは片手で数えられるほどだった。体を重ねたのは一度きり。次にいつ会えるかも分からず、彼が私を好きでいてくれる実感が持てないのがつらくて、私から別れを切り出した。

シロツメクサの花言葉は、約束――「“いつか”でいい。約束さえあれば頑張れる」
シロツメクサの花言葉は、約束――「“いつか”でいい。約束さえあれば頑張れる」

 それから15年後。仕事がらみの会合で偶然、和彦さんに再会した。一目見た瞬間、彼への思いがよみがえった。2年後、2度目の偶然の再会を果たしたときは、誰にも言えない確証を得てしまった。別の男性と結婚を2度して、子どもを3人産んでも、好きな人はずっと好きなんだ、と。

 今、心の中でこう思っている。

 人生を一緒に歩むパートナーは夫じゃない。やっぱり和彦さんがいい。