自由を奪われて、犠牲心の塊のようになっていたかもしれない。それが彼と出会って満たされたおかげで、なぜか夫にも優しくできる余裕が生まれたことに驚いている。勝手な言い分だが、20年間の結婚生活で夫の関係は今が一番いい。

 でももし願いをかなえてくれると言ったら、彼と好きな時に会って、夫婦ごっこをしてみたい。と同時に、想像するだけで満足しなきゃな、と自分に言い聞かせる。

 彼から、妻と出掛けたという話がメッセージで送られてきた時、私との距離を詰め過ぎないようにしているのが分かって、落ち込んだ。彼の冷静さは気持ちの暴走を防ぐストッパーになって安心だが、やっぱり、どうしようもなく切なくなる時はある。

 でも、夜が近づいて、あと何時間したら彼からメッセージが来るかな、と想像するだけで、甘い気持ちになれる。

彼がいないと私の生活は色あせる

 彼がいなければ、私の生活の色合いは、白、黒、青、緑、黄色の5色ぐらい。でも彼と出会えたおかげで、キラキラとした銀色や金色、ひすい色やもえぎ色などの珍しい色合いもたくさん加わった。今、私の世界は、36色以上だ。

 今朝も、彼からメッセージが来た。この一通で、家事や仕事を頑張れる私がいる。簡単に手放す気にはなれない。これが、私にとって最後の、心が熱くなる出会いかもしれないから。

取材・文/茅島奈緒深 写真/鈴木愛子