コロナ禍で急速にテレワークが広まり、働き方や意識も様変わりしています。ワーク・ライフバランスコンサルタントとして1000社の働き方改革を主導してきた小室淑恵さんは「今こそ変革を定着させるチャンス」と断言します。Withコロナの今、テレワークの波に乗り、ワークとライフのバランスを実現させながらキャリアを重ねるには何が必要なのか。全3回でご紹介します。

(1)小室淑恵 長時間労働のラスボス・霞が関を今こそ変える ←今回はココ
(2)テレワークで「仕事時間が増えた」人と会社への処方箋
(3)小室淑恵 リモートワーク時代に必要なリーダーシップ

1000社の働き方改革で分かった 長時間労働の震源地

―― 2020年4月の緊急事態宣言後、民間企業ではテレワークが一気に進みました。一方で、小室さんたちが6~7月に実施した「コロナ禍における政府・省庁の働き方に関する実態調査」によって、省庁でテレワークが進まない実態や4割が「過労死レベル」といわれる月100時間超の残業を行うなど過酷な長時間労働の実態が浮き彫りになりました。霞が関に着目したきっかけを教えてください。

小室淑恵さん(以下、敬称略) これまで1000社の働き方改革に関わる中で、「霞が関と関係が深い業界は、長時間労働の改善が難しい」という事実が見えてきました。霞が関の役人は「何かを直前に命じられて、すぐに対応せねばならない」という状態が当たり前になっています。

 役人に「この資料を基に2日後に入札するように」と命じられた企業が、下請け企業にさらに短納期で見積もりを発注し、その企業はさらに孫請け企業に発注を出す――といった構造がある。つまり世の中で起きている残業の震源地の多くが霞が関なのです。

「中には残業が300時間超の官僚もいました」
「中には残業が300時間超の官僚もいました」
出典/「コロナ禍における政府・省庁の働き方に関する実態調査」(調査期間は2020年6月19日~7月13日、回答者は現役国家公務員480人、ワーク・ライフバランス社調査)を元に編集部でグラフを作成
出典/「コロナ禍における政府・省庁の働き方に関する実態調査」(調査期間は2020年6月19日~7月13日、回答者は現役国家公務員480人、ワーク・ライフバランス社調査)を元に編集部でグラフを作成

 このやり方が常態化しているため感覚がまひしてしまっていますが、これまではアンタッチャブルな部分だった。ですから私は霞が関を「働き方改革のラスボス」と呼んでいます(笑)。いくら企業が改革を進めても限界があるので、震源地であるラスボスを倒さないことには本当の改革は成し遂げられません。