『東京ラブストーリー』からおよそ30年。同ドラマのリメイクが決まったことが話題ですが、今、柴門ふみさんが満を持して描いているのは『恋する母たち』(小学館)。全4回の連載第2回では、柴門さんが「40代の母親の恋」を描く理由に続いて、柴門流の働き方について語ってくれました。

(1)東ラブから30年。柴門ふみが描く「40代からの恋」
(2)がん経験で残り時間を意識 創作力は今が最高  ←今回はココ (3)「ご機嫌に年を重ねる5カ条」人生に無駄はない
(4)「ご機嫌に年を重ねる5カ条」後編

「20代や30代女性の恋愛はもう十分に描いた」

―― 話題の最新作『恋する母たち』(以下、『恋母』)が生まれるきっかけとして、53歳で乳がんと診断され、治療を経験したことも大きかったとおっしゃいました。当時の気持ちを聞かせていただけますか。

柴門ふみさん(以下、敬称略) 「人生には限りがあるんだ。『終わり』から逆算して、今しかできないことをやろう」という気持ちになりましたね。つまり、「既に経験したことはやらなくていい」と考えるようになって、作品のテーマもその視点で絞られていったんです。

 20代や30代の女性たちの恋愛はもう十分に描いた。思春期の子どもを持つ40代の女性たちの恋愛はまだ描いていなかったな、と徐々に『恋母』の構想が固まっていきました。

―― 「既に経験したことはやらなくていい」という考え方は、プライベートにおいても同じく実践してきましたか?

柴門 はい。食やファッション、旅行でも。若い頃は、都心に新しくできたレストランに友達と集っては「おいしいね」って言い合うのが楽しみだったんですけど、今はもういいかな。お寿司もフレンチもイタリアンも、それぞれのおいしさは「だいたいこういう感じだよね」と分かったし、ものすごく奇をてらった創作料理はそれほどおいしくないことも分かったので。今は、普通に日常の食事を楽しめたら満足です。

『恋母』は、昨今ワイドショーをにぎわす不倫も描かれる作品だが、「『もしも今のあなたがこういう恋愛をしたら、こうなります』というシミュレーションを複数パターンにわたってお見せしているつもりですから、どうぞ漫画の世界だけで安全にお楽しみください」と笑う
『恋母』は、昨今ワイドショーをにぎわす不倫も描かれる作品だが、「『もしも今のあなたがこういう恋愛をしたら、こうなります』というシミュレーションを複数パターンにわたってお見せしているつもりですから、どうぞ漫画の世界だけで安全にお楽しみください」と笑う

柴門 ファッションについても、昔は流行にも影響されたし、「この服、好き!」と飛びついて買って着てみて似合わなくて……という失敗を何度も繰り返し。そのうち、好きな服と似合う服は違うと気づいてからは、むやみに勢いで買うのをやめました。今は世の中の流れとしても、「今年の流行はこれ」と言って皆がそれを着る時代ではないですよね。自分の体形に合って気に入った服があれば、それをずっと着ていたっていいと、最近は思うようになりました。

 旅行も昔はハワイや南の島、いわゆる有名リゾート地にいろいろ行っては楽しんでいましたが、「ハワイに何回行っても同じ経験にしかならないよね」と結論づいて(笑)。今の連載が落ち着いたら、行ったことのない国に旅行したいですね。

―― 例えば、どんな国が候補に?

柴門 ロシアや北欧にはまだ旅をしたことがないので、行ってみたいです。死ぬまでにできることは限られているから、同じ経験を繰り返すのは無駄だなと、何に関しても思います。