53歳で乳がん、人生を振り返った

柴門 「私はこれまでずっと男性読者を喜ばせるラブストーリーに甘んじてきたんじゃないか。むしろ男性が読んでも理解できないような『女性の共感』を得られる物語を描きたい。それを描き切るまではやめられない」と。その決意が、この作品に挑んだ強い動機になっています。

―― 60歳ごろといえば2~3年前のことですね。何か直接のきっかけがあったのでしょうか。

柴門 1つは、53歳で乳がんを患い、人生を振り返る機会を得たというのも大きかったと思います。手術を終えて落ち着いた頃に、「もう漫画をやめようかな」と今後をじっくり考えたんですね。そこで「私はまだ描き切っていない」と気づくのと同時に、「やっぱり物語を描きたい」という欲求を再認識しました。これまでエッセーの執筆も並行してやってきましたが、私はやっぱり漫画家として創作を続けたいと。

女性の人生は、40代が一番面白い

―― 『恋母』の登場人物の年齢が40代であることにも、こだわりが?

柴門 どんな女性たちを描いてみたいだろうかと、これまでの私の人生や出会ってきた女性たちを思い浮かべてみたときに、「女性の人生の中で、40代が一番面白い時期だな」と思ったんですよ。

 40代って容姿や体力が衰えていく境目でもあり、人生のいろんな局面で「こんなはずじゃなかった」というアクシデントが起こる時期。社会に出る頃にはみんな横並びだったのに、結婚したり、出産したりとライフスタイルが枝分かれして、気がつけば「誰一人として自分と同じ状況にはいない」とがく然とする。

 どこにもモデルはいないから、自分の人生は自分で決めて行動しないといけないのだと自覚する。だからこそ面白くなる時期だと思うんですよね。

 特に、今の40代は働く女性が増えて、20年前の40代とは全然違う。ますます面白くなっているなと感じます。

―― ヒロイン全員が息子の母親という設定には、意図があるのでしょうか?

『恋する母たち』(小学館)は5巻まで発売中。3人の恋する母が選ぶのは、家族か、恋か、仕事か――
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