日系ブラジル人のヘルパーさんが残してくれたメモ
そのあとに来てくれたY子さんは、とにかく優しくて働き者でした。身長が170センチくらいあって、目がなくなっちゃいそうな笑顔がかわいらしく、ドライカレーを作るのが得意。気づかないうちに、玄関回りや隣の門の前までモクモクと掃除してしまう凄腕です。口数の少ない彼女が居てくれたのは、3年ちょっとだったでしょうか。
ブラジルに残してきた95歳のお母様と暮らすために帰国を決意した……と打ち明けてくれました。
日系ブラジル人の彼女が残していった漢字交じりのメモが手元にあります。
「貴方のような女性に出会えて、お母様を思う気持ちにより添えたこと嬉しく思います。でも、最後まで一緒に居られなくてごめんなさい。まりさんは笑顔がとても素敵だから、これから色々あっても笑顔でいてね。今まで本当にありがとうございました。」
私だけじゃなく、交代のヘルパーさんにもスターバックスのチケットが置いてありました。
私に宛てた私信を明かすのは本意ではなく、それ以前に毎日バタバタと仕事場と家を往復している、どう見ても全くすてきとは思えない自分です。でも、介護職の方々との出会いや触れ合いをどんなふうにお伝えしたらよいかと思った時に、Y子さんからの手紙の抜粋はストレートに芯の部分を伝えてくれる気がしました。
地球の反対側でお母さまと過ごしている彼女のことを想像しながら、職種は違っても、彼女みたいに心地よいサービスを私も本業で提供できるようになりたい、そう願っています。
両親を通して知り合うことができた介護職の方々とは、これからもつかず離れず、そして無理せずを心がけつつ、せっかく共有している時間がちょっとでも楽しいものであるように暮らしていきたいと思っています。
雨の季節になりましたね。また、お便りしますね。
文/渡辺真理 写真/渡辺さん提供