母と介護職の方々と過ごす瞬間が私の宝箱になるかも

 人生の晩秋を迎えた母は、子どものように無邪気なひと言を口にするかと思えば、達観したような表情で、哲学的なことを言ったり。母という人の中にあるいろんなカケラが、その時々にキラッと光っては言葉や表情となって、自由にあふれて出てるような。母と介護職の方々と過ごす、こんな瞬間が、もしかしたらこれからの私の後半人生を細やかに支えてくれる宝箱になるかもしれない、そんな予感を持っています。

 考えてみれば、学生の時も仕事場でも、温かな気持ちとともに思い出すのは、どうにもおなかがすいてしまった放課後、友達と図書館で勉強しながら、こっそりお菓子を食べたこととか、深夜まで長く続いた仕事の後、スタイリストさんやメイクさんを送りがてら、一緒に食べたとんこつラーメンの味とか。気付くと食べた思い出ばかりですが、記憶に刻まれているのは、そんな何気なく笑い合った時間のいとおしさ、なんですよね。

 お答えになっていたか、ちょっと自信はありませんが、人生の晩秋から初冬にかけて、気持ちがほぐれ、和らぐような小春日和がどなたの上にもたくさんありますよう祈りつつ、また、おたよりお待ちしていますね。

 ごきげんよう。

文/渡辺真理 写真/渡辺さん提供