手術直後に医師からは、「散歩できるくらいまでの回復を目指します」と診断されたのですが、術後に肺炎を併発してしまったためその病院に半年入院し、リハビリのため総合病院に転院して1年。病院に泊まり込んで付き添っていた母が父の気持ちを慮(おもんぱか)り、自宅に戻って療養するようになったのが、ちょうど介護保険制度がスタートした2000年の春でした。

 自分で体を動かすことはままならなくなっていた父が自宅でもヘルパーさんの力を借りて過ごせるよう、慌てて環境を整えて、ちょうど満開の桜がはらはら散り始めるなかでした。ずっと帰りたがっていた家に父を迎えることができた日のことをよく覚えています。

 それから14年。主治医の先生やケアマネージャーさん、訪問看護師さん、ヘルパーさんなど介護職の方々と常に相談しながら、支えていただきながら、父を中心に自宅での療養・介護生活を送り、2014年2月に、母の隣で54回目の結婚記念日を静かに過ごした翌日、大動脈瘤破裂で(と搬送した病院で分かったのですが)、父はすっと旅立ちました。

(C)PIXTA
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