ビジネスにイノベーションを起こすための起爆剤として注目を集めている「アート思考」。第1回は、アート思考とは一体何なのか、なぜ今、アート思考が求められているのかについて解説しました。今回はアート思考を磨くワークショップについて、アート思考の仕組みを開発実践しているボダイの町田裕治さんに聞きました。

(1)限界突破!ビジネスに変革を起こす「アート思考」とは?
(2)アート思考を磨く第一歩「自己紹介アート」を体験する ←今回はココ
(3)アート思考を仕事にどう生かす?鍵は「インプロ創造性」

アート思考は誰でも磨ける?

 今回は「アート思考を磨く第一歩となる」という、町田裕治さんによるワークショップの体験リポートをお届けします。「3人の方に体験をしていただいた自己紹介ワークショップは、読者の皆さんだけで行うことも可能です。オンラインでも対面でも、3、4人でもそれ以上でもかまいませんから、グループで行うといいでしょう。前回お話しした通り、アート思考は誰でも磨くことができます。以下の内容を参考にしながらぜひ挑戦してみてください」

 では、どのようなワークショップだったかをダイジェストでお伝えします。

自己紹介ワークショップ
参加者/ARIA世代の女性3人(3人とも美術鑑賞は好きなものの、絵の具に触れるのは学生時代ぶり)
準備するもの/ 画用紙(2枚以上準備)、水彩絵の具、筆、筆洗い、パレット(紙製のものが便利)、はさみ、のり
目安の時間/絵を描く時間:20分、自己紹介:一人3分(あくまでも目安。盛り上がったら延長可)

 まずは町田さんからお題が提示されました。「今日、皆さんに描いてもらうのは自己紹介アートです。会社での肩書や立場を忘れて、『私はこういう人間です』と絵で表してください。筆を使っても指で描いてもかまいませんし、画用紙1枚でも、2枚でも、何枚でもかまいません。画用紙を折りたたんでも、切り刻んでもいい。とにかく自由です。時間は20分です。さあ始めてください」

水彩絵の具や筆は100円ショップで売っているものでOK。机に新聞紙やビニールを敷き、汚れてもいい服装で行いましょう。3人の手は、いつの間にか絵の具まみれになっていました
水彩絵の具や筆は100円ショップで売っているものでOK。机に新聞紙やビニールを敷き、汚れてもいい服装で行いましょう。3人の手は、いつの間にか絵の具まみれになっていました

「ゴールを考えない制作」にうろたえる3人

 「ご自由にどうぞ」と言われ「えっ」と固まる3人。町田さんは続けて、「絵を描く心構えは、上手に描こうとしないこと、何を描けばいいか思いつかないときは、指に考えさせることです」とアドバイス。いわば、小さな子どもが初めて絵の具を手にして、ワーッと描くようなイメージでよいようです。

 「後ほど各自が描いた絵で、自己紹介をしてもらいますが、自分がどういう自己紹介をするかはあまり考えず、絵ができてから無理やりこじつけてもかまいません」(町田さん)。しかし、自由にどうぞ、何も考えずに、と言われてむしろうろたえるARIA女子3人です。

 「どう自己紹介するかを考えずに描くというのが、何だか難しいですね」とAさん。「いつもゴールや目標ありきで仕事をしていますからね」とBさんも同調。ビジネスでは、着地点を想定し締め切りをにらみながら、どうアプローチするかを試行錯誤して進むのが定石。3人の参加者も、長年の間に無意識のうちに染みついた仕事や思考のスタイルに縛られています。

 「とにかくまずは既成概念を取っ払うこと。自由な状態で生み出す発想、ひらめきのような創造性を体験するのが、このワークショップの肝です。正解はありませんし、得意・不得意という意識もいりません。創造性は必ず全員に備わっています。しかも等価。どんなアイデアも同じくらい貴重です」という言葉に励まされ、いよいよスタートしました。

3人が描いたのはこの絵。切り絵、しっかり描き込んだ絵、シンプルな絵…。まさに三者三様です。
3人が描いたのはこの絵。切り絵、しっかり描き込んだ絵、シンプルな絵…。まさに三者三様です。