ビジネスにイノベーションを起こすための起爆剤として注目を集めている「アート思考」。アート思考とは一体何なのか、なぜ今、アート思考が求められているのか。そして、アート思考を磨くにはどんな手があるのか。ビジネスに活用できるアート思考のメソッドを研究し、ワークショップを開催するボダイの町田裕治さんに聞きました。

思考を「ビジネスの外」に開放する

―― 最近、「アート思考」という言葉をよく聞くようになりました。町田さんが考えるアート思考とはどのようなものでしょうか。

町田裕治さん(以下、敬称略) 私が提唱しているアート思考とは、「アートの実践から学ぶ、創造力の鍛え方」です。「誰もがアーティストであり、その発想はビジネスに生かせる」と言った方が分かりやすいかもしれません。

 既成概念の中にいるだけでは、ビジネスにイノベーションは起こせません。既成概念を破るような独自の発想、創造性が必要です。そのためには、「ビジネスの外」に出て、いったん感性のセンサーを開放する。そして、誰もが持っている創造性を発揮できるようにするためにアートを制作し、その体感をビジネスで新たな発想を出す際にも生かしていきましょう、というのが私のアート思考の手法です。手法といっても、プロセスやスキルではない、と言っています。何度も創造性を出す練習をして、体感して、無意識も意識も動員して、癖にしていくような感覚です。

個の好奇心や創造性が力を発揮する時代へ

―― なぜ、アート思考が注目されるようになったのでしょう。

町田 3つほど理由が考えられます。1つ目は従来通りのやり方ではビジネスに限界が見えてきたことですね。これは私が日本で企業のコンサルティングを行っている上での実感ですが、先行きが見通せない中でいい事業が生まれない、新しい社会に対応するようないい発想が出てこないという声はよく聞きます。

 2つ目は人工知能(AI)の台頭で、人間にはより人間らしい仕事を求められるという「風潮」があることです。実際のところ、今のAIでは人間の代わりの仕事はできないことが多いのですが、そういった「時代の気分」が広がっているということでしょう。

 そして3つ目に「個」の時代になっていることです。

―― 「個」の時代とは、どういうことでしょう。

詳細は次ページ以降で解説します
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