第1回ではリモートワークにおける信頼関係の重要性について聞ききましたが、第2回はチームの自走力をつけるために上司はどのようなかかわり方をすればいいのか、もう一歩踏み込んで聞いてみましょう。トラブルがあったとき、上司がどんな言葉をかけるかで結果が大きく変わるようです。『課長2.0』(ダイヤモンド社)の著者であり、リモート下で複数のプロジェクトを動かしてきたプレゼンテーションクリエーターの前田鎌利さんに、詳しく話を聞きました。

(1)リモート時代のマネジメント成功のカギは部下への信頼
(2)自走するチームをつくれるか 命運を分ける上司の質問力 ←今回はココ
(3)部下は会議で育てる! リーダーの仕事は「外脳」づくり

リモート環境で部下が相談しやすい場づくりとは

 前回、信頼関係を築くことの大切さ、そのために自己開示をしてお互いを知る必要性についてお話ししましたが、メンバーとのコミュニケーションを深める方法を2つ紹介します。「場づくり」と「自己紹介のプレゼン」です。

 場づくりは、対面であれば机のそばに椅子を置いておいて「いつでも相談にきてね」という場所を作ることが有効ですが、オンラインの場合はチャットをフル活用するのがいいです。電話だと1対1で時間を拘束されてマルチタスクをこなせないので、チャットが有効です。ここで大事なのはクイックレスポンスです。

 対面のときは、部下が「上司は今時間が取れそうだな」と見極めてアクセスしてきますが、オンラインだと今上司が暇かどうか分かりません。いつ回答をもらえるか分からない状態でメールして返事がないと、「あれ、まずかったかな」と不安になる時間が長くなり、変に考えすぎてメンタルも弱ります。とにかくすぐに返すこと。絵文字だけでもいいです。

 また、メンバーが報・連・相してきたらメチャクチャ喜ぶ。「こんなに早く持ってきてくれたの? ありがとう!」と全力歓迎するだけで、「もっと報・連・相しよう」と思いますよね。「次もこの人のために早めに持ってこよう」「他の仕事より優先的に進めよう」と思えるものです。相手が報・連・相したくなるかを意識すること。

個々の強みを知ることがチームのアウトプットを高める近道

 2つ目の自己紹介のプレゼンですが、導入しやすいのは会議の冒頭5分間は雑談すると決めること。趣味、夢、仕事で大事にしていること、失敗したこと、こうしたプレゼンをメンバー間で時々することで、学びがあったり気づきがあったりするし、お互いの理解が深まります。

 才能診断ツール「ストレングスファインダー」のテストをみんなでやるのも効果的です。一人ひとりの強みや特性をお互いに知ったうえでタスク分散することで、チームのアウトプットが極大化します。

 その人の強みを知ることは多様性の時代に大事なこと。いろんな得意分野を持つ人が集まっている方が組織は強いです。エースピッチャーばかり集めても野球は勝てないのと同じです。

 個々の強みを発揮できる機会をつくることで、任せる側も信頼して任せやすい。人は苦手なことを任せられてもやりたくないからやらなくなるものです。管理職はその人の適性に合う仕事をつくるのが役割。なければ取ってくる。それもマネジメントの仕事です。

 もちろんプレゼン大会をやったからといって、すぐにメンバー間の信頼関係ができるわけではありません。しかし、そのような場を設けなければ、知り得ないこともたくさんあるのです。

 常に顔を合わせて雑談したり、ランチなどで仕事以外の話をしたりする機会が少ないリモート環境下において、管理職が意識すべきなのは、メンバー同士が人間として距離を縮めることができる場をつくることです。