親との死別は「悲しみの期間」に時間をかける

 親御さんとの死別は「喪失」を強く感じさせるものですね。そういう時期に孤独を感じるのは当然のことだと思います。無理に明るくすることなく、「悲しみの期間」に時間をかける必要があります。「親もいなくなってしまった。私は孤独だ」という感情だけでなく、親御さんとの歳月を思い出し、できれば親御さんをご存じだった方と思い出話をするのも効果的です。

 親を失うというのは人生のいろいろな時期に起こりうるものですが、ご相談者の場合、ちょうど「老後を考えると不安」という時期に重なってしまっています。50代は「老後」を考える時期だとも言えます。仕事がなくなったときの自分がどうやって生きていくのか、リアルに考えるようになる時期なのです。これは親との死別とはまた別の、不安を生むテーマです。

 この2つの大きなことが重なってしまっているというのが現状で、それは大きな孤独感や不安につながって当然だと思います。

 それでもこの方の場合、「学校や会社などその時々で所属するコミュニティーはありましたし、仕事など目の前のことに追われ、自分のコミュニケーション能力不足を深く考える機会はそうありませんでした」というところが一つのカギになります。