家事代行サービスのパイオニアであるベアーズ・取締役副社長の高橋ゆきさん。妻として、母として、活躍する女性経営者の一人として、山あり谷ありの道のりを歩んできたゆきさんだからこそ語れる、“幸せのレシピ”を全6回でお送りするこのコーナー。第3回は、会社を経営する中で迎えた「大きな転機」と、ゆきさん自身が実践した「トップの働き方改革」についてじっくり語ってくれました。

会社のリスクは私? 経営者としての在り方を変えた

 2011年に東日本大震災が起こった時、これまでの自分の生き方を振り返り、「何が本当に大切か?」を見つめ直した人も多かったかもしれません。私もそのうちの一人で、あの出来事が会社を経営する上での大きな転機となったように思います。

 当時、ベアーズの専務取締役として、社内を統括する立場にあった私は、1から10まで各事業の進捗状況を把握し、マネジメントだけでなく、プレーヤーとしても業務に携わっていました。現場で仲間たちと事業を育てていくことがとても楽しかったし、私自身がそうしたいと望んでいたからです。

 でも、東日本大震災という未曽有の災害が起きて、「ベアーズという企業のリスクってなんだろう?」と考えた時、「一番のリスクは私かもしれない!」と、はたと気付いたんです。

「専務の時は1から10まで各事業の進捗状況を把握し、マネジメントだけでなく、プレーヤーとしても業務に携わっていました」
「専務の時は1から10まで各事業の進捗状況を把握し、マネジメントだけでなく、プレーヤーとしても業務に携わっていました」

 私という存在がいるから、会社や組織が活気づく。事業も伸びていく……。もし、そうだとしたら、企業体としてリスクが大きいなって。サグラダ・ファミリアみたいに次世代まで脈々と創造の情熱が受け継がれていくような企業を目指していたので、「ここで経営者としての自分の在り方を変えなければいけない」と本気で思いました。

 ただ、関わっている事業があまりにも広範囲だったため、手放すのには相当時間がかかるだろう、と。その時、42歳でしたので、「50歳までには自分がいなくても勢いを保ち続ける組織をつくろう。社員一人一人がワクワクして働けるような場づくりをしよう」と、少しずつ手放す準備をしてきました。