就職活動中だった息子から、「今あるすべての業界についてママが知っていることを教えてほしい!」と突然頼まれてしまったんです。

 彼の就活のやり方はちょっと変わっていて、自分がどの業界に行ったら自分らしく働けるのか、全部の業界を一から調べたいというのです。毎晩、自宅のリビングのテーブルを占拠して各業界の資料をいっぱいに並べられていて、私は家に帰りたくないなぁと思ったほど(笑)。

 「家事代行のことなら分かるけど、他の業界のことまで分からないよ! ムリムリ!」と突っぱねると、こう言い返されました。

 「ママは僕たち子どもを置いて、何十年も仕事に没頭してきたよね? その息子が人生の大事な岐路に立っていて今母親を必要としているんだよ! 社会に出ていろんな業界の人と会ってきたからこそ分かる、『ママのフィルター』を通してこの社会のことを教えてほしいんだ」と。

 その言葉にハッとして、がぜん気合いが入りました。いつどんな業界について聞かれてもいいように、IT、商社、金融……と毎晩、家に帰る前にお勉強。さも前から知っていたかのように20分ぐらい話し、毎日が家庭内講演でした(笑)。

 この期間中は、もう頭が飽和状態。疲労困憊(こんぱい)の日々でしたが、おかげで息子も自分の道を自力で見つけることができて。息子から「ママ、働き続けてくれてありがとうね」と言われた時は、これまでの人生の選択すべてが肯定された気がして、胸がいっぱいになりました。

「息子から『ママ、働き続けてくれてありがとうね』と言われた時は、これまでの人生の選択すべてが肯定された気がして、胸がいっぱいになりました」
「息子から『ママ、働き続けてくれてありがとうね』と言われた時は、これまでの人生の選択すべてが肯定された気がして、胸がいっぱいになりました」