音楽評論家、作詞家として50年以上のキャリアをもつ湯川れい子さん。仕事だけでなく、家族や恋愛・夫婦関係、子育て、そして闘病などにも触れた自伝が話題です。「女ですもの 泣きはしない」(『六本木心中』より)という自身の歌詞のように、様々な出来事にたくましく向き合ってきた湯川さんに、「女の人生」についてインタビューしました。最終回となる今回は人生後半の醍醐味がテーマです。

死ぬまで“きょういく”と“きょうよう”が大事

―― 80代を迎えて一層若々しく精力的に、音楽の仕事を続けている湯川さんから、「長く働く醍醐味」について教えてください。

湯川 私が80歳になった時のパーティーに、キャリアウーマンの大先輩、日本ユニセフ協会会長の赤松良子さんが来てくださったんです。その時に授かったアドバイスが、まさにこの問いの回答になると思います。

 曰く、「湯川さん、人間は死ぬまで“きょういく”と“きょうよう”が大事なのよ」。「なるほど、教育と教養ですね」と頷きかけたら、違うんですって。「“今日行く所“と“今日の用事”があるってことよ。それがあるかないかで、人生の後半は全然違うんだから」と(笑)。とても腑(ふ)に落ちました。

 私の親友にアメリカで日本食ビジネスで成功した女性がいて、70歳を機に「そろそろ商売にも疲れちゃったから」と引退して店を畳んでラスベガスに引っ越したんです。毎晩ショーを見放題、プールに入り放題で悠々自適の余生を送ってさぞ楽しんでいるだろうと思ったら、会うたびに嘆くばかり。「仕事を辞めるんじゃなかった。明日の目的がないことがどれほどつらいことか」と後悔しているんですよ。ガードマンに守られた静かな居住区の内側から、窓の外にボーッと見える街の灯りを眺めているとむなしくなるんだそうです。そのむなしさは、ボランティアや趣味のサークルでは埋められないのだという彼女の話を聞きながら、たしかにそうなのかもしれないな……と思いました。

「『湯川さん、人間は死ぬまで“きょういく”と“きょうよう”が大事なのよ』と言われたことが心に残っています」(写真は1990年、54歳ころの湯川さん)