ただただ、この手につかんだ今日の仕事を大切に、「明日も持ち続けることができますように」と願うだけ。明日も今日と変わらず仕事を続けていくためには、どうしたらいいか。私はフリーの立場だったから、相手とけんかになって飛び出してしまったらそれで終わり。嫌な思いもたくさんしましたけれど、そうならないための自己武装の方法は少しずつ身に付けていきました。それは単にニコニコと相手に愛想を振りまいてお茶を濁すことではないんです。相手にばかにされない自分になろう、という気概であり、佇まいを磨こうと思っていました。

「口説けないくらいの女になろう」と思っていた

―― 女性が女性らしさを失わず、かつプロフェッショナルとしての仕事を続けていく上で、心がけてきたことはありますか。

湯川 女性自身が自立と品格を保つ心構えは持っていなければいけないと思いますね。例えば、セクシャル・ハラスメントの問題に関していえば、弱い立場の女性につけ込んで罪を犯すことは許されないですし、「そこにおいしそうなリンゴがあったから、盗って食べたくなった」なんて言い訳は成立しないことは大前提。その上で、女性のほうも一人の大人としての“隙”を見せてはいけないという自覚は必要です。若い頃の私は「ちょっと恐ろしくて口説けないくらいの女になろう」と思っていました(笑)。

「女性のほうも一人の大人としての“隙”を見せてはいけないという自覚は必要です」
「女性のほうも一人の大人としての“隙”を見せてはいけないという自覚は必要です」