爽やかな青春小説から深い官能を描いた作品まで、数多くの恋愛を描いてきた直木賞作家・村山由佳さん。連載の最終回となる今回は、純愛を描く作家から性愛をも描く作家へと舵(かじ)を切ったきっかけや、作家として仕事をするうえでの覚悟について語ります。

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『村山由佳 30代までは人生さんざん回り道だった』

 作家生活25周年だった2017年から2018年にかけては、村山さんにとってもっとも多くの作品が出版された一年だった。その数は単行本5冊に文庫本2冊。おそらく国内でも一番多作だった小説家かもしれない。

 充実した作家生活の裏には、実はやむにやまれぬ事情もあったという。「前の旦那さんが色々と借金を残していっちゃったので、働かなくちゃしょうがなくて(笑)。普通はこんな馬鹿なことはしないという量なんですが、離婚後に自分のキャパシティーを超えるくらい連載を受けたんです」

作家生活25周年だった2018年は、村山さんにとってもっとも多くの作品が出版された一年だった
作家生活25周年だった2018年は、村山さんにとってもっとも多くの作品が出版された一年だった

 前夫の借金返済のためという、端から見たら腹立たしくなってもおかしくないような状況を、「自分に甘くて、負荷をかけるのがすごく苦手だから、こういう事情はありがたいかもしれないですね」とほほ笑む。