睡眠リズムをつくるホルモン 乱れると睡眠の質低下
この2つの睡眠ホルモン(メラトニンとコルチゾール)をコントロールするのが体内時計。体内時計には、脳の視床下部に存在する「主時計」と、細胞ひとつひとつに存在する「末梢時計」があり、目から入ってきた光刺激を主時計が感知すると、末梢時計にホルモン分泌のタイミングや体温調整、神経活動などに関する指令が送られると考えられている。
三島教授らの研究によると体内時計の周期は日本人の平均で24時間10分。実際の1日より少し長いだけだが、そのまま放っておくと1週間で1時間以上、1カ月で5時間以上も体内時計と実生活がずれてしまう。この「時差ボケ」が、夜いつまでも眠れなかったり、朝すっきり目覚めなかったりする原因だ。
「さらに、夜間の人工照明やテレビ、パソコンなどに使われるLED照明は、メラトニンの分泌を抑制し、体内時計のズレを増幅する」と杏林大学医学部の古賀良彦教授(肩書は当時)は話す。
「この体内時計の遅れをリセットするには、朝日を20分ほど浴びるといい」と古賀教授。主時計が目の網膜から入ってくる強い光を感知することでメラトニンの分泌が止まり、そこから体内時計にとっての「朝」がスタートするという。
<睡眠に関わる主なホルモン>
体内時計の乱れが以下のホルモンに影響し、睡眠の質を低下させる。
・メラトニン
⇒体に「夜」が来たことを伝えるホルモン
⇒脳の松果体から分泌
直接睡眠をもたらすわけではないが、体内時計の指令で全身に夜が来たことを伝え、眠る準備を促すホルモン。加齢とともに分泌量が減少する。抗酸化作用、コレステロール・血圧の低下作用、免疫賦活作用があるとされる。
・コルチゾール
⇒起床の準備をするホルモン
⇒副腎から分泌
「ストレスに反応して出るホルモン」のイメージが強いが、体内時計により深夜から朝方にかけて分泌量が増加、血糖値や血圧を高めて起床と起床後の活動準備をする。抗ストレス作用、抗炎症作用、免疫調整作用などがある。
・成長ホルモン
⇒傷ついた組織を修復し、新陳代謝を促す
⇒脳下垂体から分泌
成長ホルモンが最も出るのは実は寝ているとき。寝始めから3時間くらいまでに出てくる深い眠りが成長ホルモンを大量に分泌させる。途中で目覚めるとそこで分泌もストップしてしまうので、眠りを持続させることが大事。