40代に多く、経産婦に発症しやすい子宮腺筋症

 子宮内膜症組織が、子宮筋層内に入り込んだ子宮腺筋症にも低用量ピルは有効だ。ただ、低用量ピルは、血栓症のリスクが高まるため(ページ下の囲み参照)、血栓を生じやすい喫煙者は使えない。のみ始めてすぐは吐き気を感じたり、不正出血が生じる場合もある。

 一方、低用量ピルで効果がない場合は、プロゲステロンを用いたホルモン剤(黄体ホルモン剤)を使う。プロゲステロンには、エストロゲンの働きを抑える作用があり、「子宮内膜症組織に直接作用して、増殖を抑える」(百枝副院長)。なお、これらのホルモン治療は、体を「妊娠」状態にする「偽妊娠療法」といい、比較的長期に使える。

子宮腺筋症

子宮内膜症組織が子宮筋層内に入り込んで増殖と出血を繰り返す。激しい痛みがあり、経血量が多くなる。40代に多く、経産婦に発症しやすい。子宮内膜症や子宮筋腫と併発することも多い。症状が重い場合は、手術となる。治療法は、子宮内膜症とほぼ同じだ。
 低用量ピルの副作用として、血の塊である血栓が血管に詰まる静脈血栓症がある。これが原因と疑われる3件の死亡例が2014年、厚生労働省から報告された。「静脈血栓症の発症リスクは1万人に1~2人だが、ピルの服用で5~6人と約3倍に増える。だが、リスクよりも症状を改善するメリットのほうが大きい。血栓症が起きるのは使用開始から4カ月以内。ふくらはぎに異変を感じたら、婦人科主治医に相談を」(百枝副院長)。

 この血栓症リスクを考慮して、低用量ピルのガイドラインでは、「50歳を超えると血栓症のリスクは高まるため、40代は慎重投与、50代は使わないほうがいい、という内容になっている」とガイドライン作成に関わった百枝副院長は話す。