子宮内膜症の特徴「強い月経痛」

 エストロゲンが悪化に影響する主な女性の病気は主に3つで、「子宮内膜症」「子宮腺筋症」「子宮筋腫」がある。いずれも良性のものだ。一方、悪性でエストロゲンが関与する病気の代表には、「子宮体がん」と「乳がん」がある。

 子宮内膜症は、本来子宮にあるべき子宮内膜に似た組織(子宮内膜症組織)が、子宮以外にもできる病気だ。エストロゲンが増えると、子宮外にできた子宮内膜症組織も増殖してしまう。そのため、悪化を防ぐために用いられるのが、少量のエストロゲンとプロゲステロンが入った「低用量ピル」だ。その結果、自前のエストロゲン分泌は抑えられる。

 子宮内膜症の特徴に、強い月経痛がある。「子宮内膜症の人は脳に痛みを伝える神経線維が子宮内や子宮内膜にも多く、子宮内膜がはがれる月経の際に強い痛みを感じる。低用量ピルをのむと、子宮内膜の増殖を抑えられるうえ、痛みを伝える神経線維を減少させるので、月経痛も軽くなる」と聖路加国際病院(東京都中央区)の百枝幹雄副院長は話す。

 これまでの低用量ピルは、エストロゲン量35μgが主流だったが、最近は20μgと、より低用量のタイプが出て、「安全性が高まったと考えられる」(百枝副院長)。

子宮内膜症

本来、子宮にあるべき子宮内膜に似た組織(子宮内膜症組織)が、子宮以外の部位にできる病気。卵巣、腹膜、卵管などが多く、中でも卵巣にできた場合はチョコレート嚢胞(のうほう)と呼ぶ。これは、袋にチョコレート色の古い血液がたまるためだ。強い月経痛のほか、性交痛や排便痛があることが多い。不妊の主な原因でもある。
子宮内膜症のイメージ図
子宮内膜症のイメージ図。1はチョコレート嚢胞、2は腹膜病変、3は深部子宮内膜症。子宮内膜症はいろいろな臓器(場所)で発生するが、卵巣内にできるチョコレート嚢胞が最も多い

1.チョコレート嚢胞
卵巣内に袋状の病巣(嚢胞)ができ、その中に月経のたびに古い血液がたまっていく。6cm以上で手術が必要。細菌感染を起こしやすく、不妊や卵巣がんのリスクも高くなる。

2.腹膜病変
臓器を覆う腹膜や、臓器の表面に発生する一般的な子宮内膜症。数mm単位のものがいくつも散らばっていることが多く、増殖を繰り返すことで、臓器が癒着を起こすことも。

3.深部子宮内膜症
子宮と直腸の間のくぼみ、ダグラス窩(か)にできることが多い。子宮内膜症組織が腹膜の5mm以上奥にできた状態で、子宮内膜症の最も重症化した状態。性交痛、排便痛がある。

癒着
子宮内膜症組織はのり状でベタつくため、腹膜や臓器の表面で増殖を繰り返しながら広がることで、子宮、卵巣、卵管、膀胱、直腸などの臓器が互いにべったりとくっついてしまう。これも比較的多い。