突発性難聴やメニエール病の根本原因は「脳の過剰な興奮」だと分かってきました。また最近増えている「スマホ難聴」は騒音が原因で、内耳の有毛細胞が関係しています。それぞれ予防法をチェックしていきましょう。

前回記事・耳鳴り、聞こえが悪い…突発性難聴は一刻も早く病院へ

 前回の記事では、難聴を伴う3つの病気、すなわち、突発性難聴、低音部型難聴、メニエール病の特徴を見てきた。いずれも女性に多い病気だ。今回は予防法を見ていこう。

 騒音が原因の難聴はこの記事の3ページ目で紹介する。

ストレスで自律神経が乱れて発症する

 耳の構造は複雑で機能も繊細なため、突発性難聴、低音部型難聴、メニエール病のいずれも詳しい発生機序は分かっていない。しかし、「背景に寝不足、疲れ、ストレスがあるのは間違いない。これらが脳の自律神経の働きに影響を与え、発症に関わっていることが研究で明らかになってきた」(JCHO東京新宿メディカルセンター耳鼻咽喉科の石井正則診療部長)。

■当てはまる項目が多いほどストレスが強く、耳鳴りのリスクが高い
□いつも耳鳴りがしている
□息苦しくなることがよくある
□夏でも手足が冷える
□消化が悪くて困ることがある
□よく下痢、便秘をする
□首や肩が凝る
□冬にひどく汗をかく
□ひどい頭痛になることがある
□手足が震えることがある
□気候の変化で体の調子が変わる


 日ごろから冷え、下痢や便秘など、自律神経の乱れからくる不調を自覚している人は、強いストレスを受けている可能性が。聞こえの低下や耳鳴りを伴う難聴のリスクが高くなっている。

 難聴は耳の病気だが、もとをたどれば脳のトラブルなのだ。

 「疲れやストレスを感じると、自律神経は戦闘モードの交感神経が優位に。常にストレスを感じているとリラックスモードの副交感神経への切り替えがうまくいかず、交感神経の緊張が続いてしまう。それによって脳全体も興奮し、心臓の動悸が激しくなるなど臓器にも負荷をかけることになる」と石井診療部長。

 「本来ならこれは異常な事態」と石井診療部長は続ける。「ストレスが日常化している人にとってはこの異常が当たり前として恒常性を保とうとする。それを『アロスターシス』というが、いつかは体に無理がくるため、その状態が破綻する。突発性難聴、低音部型難聴、メニエール病も、アロスターシスの破綻によって引き起こされる」(石井診療部長)。

 また、難聴に伴う耳鳴りは、聞こえが悪くなったために、脳が聞こえの感度を上げることで生じる。いわば脳の過剰反応によって作りだされる音だ。「そのため、脳の興奮が続き、脳が疲れたときに耳鳴りも増悪しやすい」(石井診療部長)。

 難聴、耳鳴りを伴う病気の改善には、適切な治療を受ける一方、心と体をリラックスに導くようにストレスを調節するなど、生活習慣の改善も重要だ。

■難聴、メニエール病の3大因子は「寝不足・疲れ・ストレス」
■難聴、メニエール病の3大因子は「寝不足・疲れ・ストレス」
ストレスや疲れが日常的になると交感神経の興奮が続き、その結果、耳の聞こえにも影響。過敏性腸症候群、円形脱毛症、うつ病という不調が現れることもある。