「足の健康には、アーチが大切」。よく知られている話だが、アーチ骨格の成り立ちをさかのぼると、さらに奥深い意味が見えてくる。人類進化の視点から、二足歩行とアーチの働きをひもといてみよう。
二本の足で立ち、歩く。私たちが当たり前のように行っている二足歩行だが、動物界ではかなり珍しい歩き方だ。そもそもヒトはどうやってこんなやり方を身につけたのか。二足歩行の起源を知るために、人類の進化をさかのぼってみよう。
東京大学総合研究博物館 特招研究員の諏訪元さんは、初期人類の研究者。国際的な研究チームに参加し、アフリカの発掘調査で、440万年ほど前の「ラミダス猿人」を発見した立役者だ。
骨盤の形などから、ラミダス猿人は現代人に近い直立姿勢と判明した。だが、足の指はチンパンジーのように親指が離れており、アーチ骨格がない。直立二足歩行を始めた当初の祖先の足は、「偏平足」だったのだ。
「足で枝をつかめるので、木登りは得意だったはず。でもアーチのない足ですから、長い距離を歩くのは苦手だったでしょう」と諏訪さんは推測する。彼らは、樹木がまばらに生えるようなエリアで、木の上と地面を行き来しながら生活していたと考えられている。
ときが進み、360万年ほど前になると、現代人並みのアーチ骨格を持つ「アファール猿人」が現れた。「アーチのある足になったことで、長距離を移動したり、獲物を追って走ることが可能になったと考えられます」(諏訪さん)。
アーチを内蔵する「健脚」を得た彼らは、樹上生活を捨て、平地が広がるサバンナに進出した。アーチを手に入れたことで、ヒトの歩行力は飛躍的に高まったのだ。
アーチには「クッション」&「アクセル」の効果がある