アーチの弾力が果たす2つの機能を発揮する

 なぜアーチがあるとしっかり歩けるのだろう。カギを握るのは、アーチの「弾力」だ。

 「アーチ状に並ぶ骨格を保っているのは、足の裏の靱帯です」。順天堂大学 保健医療学部 特任教授で、解剖学が専門の坂井建雄さんはこう話す。靱帯は、骨をつなぐ強固な組織。弾力があり、強く引っぱられるとわずかに伸びる。

■筋肉と靱帯のバランスでアーチを保っている
■筋肉と靱帯のバランスでアーチを保っている
アーチ骨格を支えるのは、足の骨同士をつなぐ、足の裏側の靱帯群。靱帯は弾性のある強い組織で、引っ張られるとわずかに伸縮し、弾力を発揮する。また、足底の筋膜や細かな筋肉も、アーチ骨格の安定に働いている。

 歩くときのアーチの様子を見てみよう(下図)。足が地面に接地するときは、アーチを広げる方向の力が働く。このとき靱帯がわずかに伸び、衝撃を吸収する。そして次の瞬間、かかとが浮くと、伸びた靱帯がきゅっと縮んでアーチ(特に縦方向のアーチ)を引き締め、つま先が自然に地面を蹴る。

接地したときは、アーチの底を支える靱帯が、板バネのように伸びてクッションの役割をする。衝撃を和らげ、接地を安定させる作用だ。
接地したときは、アーチの底を支える靱帯が、板バネのように伸びてクッションの役割をする。衝撃を和らげ、接地を安定させる作用だ。
かかとが浮いて指が反ると、靱帯を一層引き伸ばそうとする力が働く。すると靱帯が収縮してアーチが強まる。これが足指で地面を押す推進力を生む。
かかとが浮いて指が反ると、靱帯を一層引き伸ばそうとする力が働く。すると靱帯が収縮してアーチが強まる。これが足指で地面を押す推進力を生む。

 つまりアーチ骨格は、靱帯の弾力によって、「衝撃吸収」と「推進力」という2つの働きを発揮する。これが歩行の機能を高めているのだ。

 「生まれたばかりの赤ちゃんには、足のアーチがありません。二本足で立ち、歩くことによって靱帯や筋力が強くなり、アーチが作られます」と坂井さんはいう。

 偏平足は、アーチ形成が不完全な状態。外反母趾や浮き指も、アーチ骨格の変形と理解できる。このような足では、アーチの弾力は低下している。それが、さまざまな足のトラブルを招く根本原因なのである。