自分の「普通」は他の人には通じない

 「普通、こうだよね?」。しばしば耳にする言い回しですが、人からこんなふうに言われて、なんとなく不快に思ったことはありませんか。それは、「普通」という表現の中に、意見を押し付けたり、ほかの意見を一刀両断したりするようなニュアンスがあるからです。「常識」「当然」「あり得ない」といった表現にも、同じようなニュアンスが含まれています。

 言った人の頭の中では、それが「普通」で「常識」なのでしょう。ですが、何を普通と考えるかには、驚くほど個人差があります。これに自分で気づくのは、なかなか難しい。他人に「普通、こうだよね?」と言われた場合は「いや、そう考えない人もいるよ」と比較的冷静に判断できても、自分の頭の中の「普通」に対して「そう考えない人もいる」と想像するのが難しいのです。

 人に何かを依頼したり意見や提案をしたりするときは、この頭の中の「普通」が、言葉の端々に表れがちです。「(私と同じように)こう考えるのが当然でしょ」と言いたげな姿勢が、相手には押し付けがましく伝わります。あなたの発言が賛同されにくいのは、そんな姿勢への反発もあるのかもしれません。

 そこでレッスン1では、まず自分の中の「普通」をチェックしてみましょう。依頼や意見を伝えようとするとき、「普通、○○するでしょ」などと言いたくなる局面はありませんか? そういう部分を見つけたら、「○○しないかもしれない」と言い換えてみましょう。「あり得ない」と決めつけていた選択も、言葉にしてみると、意外に「アリ」だと気づきやすいものです。

Lesson1 あなたの中の「普通」「常識」を探して言い換えてみよう
「普通」「常識」「当然」と思っていることは、本当にそうだろうか。「普通○○するでしょ?」と言いたくなる場面に出合ったら、「○○しないかもしれない」「○○しないこともある」などと言い換えてみよう。自分の「普通」は、意外に狭い「思い込み」と気がつくかもしれない。