忙しいと、ちょっとしたことでイラッとしたり、思わず人にきつい態度をとってしまうことがあります。そうならない、「思いやりのあるココロ」を育てる方法を考えましょう。雑誌『日経ヘルス』から、アドラー心理学に基づいた「ココロの救い方」を発信します。

自分のココロの中にある「思いやる気持ち」に気づこう
自分のココロの中にある「思いやる気持ち」に気づこう

 朝の通勤時間、駅の自動改札を通り抜けようとしたら、目の前の人がまごついていて、前に進めない。「急いでいるのに!」と思わず舌打ちをしてしまう。その一方で、あとからそんな振る舞いをした自分に対して、「私、こんなにイヤな人だっけ」と振り返る——こういうことはありませんか?

 私たちはみんな「ああしたい」「こうしたい」という欲望を持っています。仕事や勉強を頑張っているときは、こうした欲望がモチベーションの一角を支えたりもする。人間の成長を後押しする大切な要素です。

 ただ、欲望が強くなりすぎると、人のことを省みない身勝手な行動をとることもあります。冒頭の場面で舌打ちしたくなるのは、自分の欲望を遮られたことへの反応と考えられます。

 では、そんな自分を「イヤな人」と感じるのは、なぜでしょうか? それは、私たちのココロの中には「他者を思いやる気持ち」も、当たり前のようにあるからです。

おさらい アドラー心理学って何?
オーストリアの精神科医、アルフレッド・アドラー博士(1870〜1937年)が創始した心理学。関連書籍『嫌われる勇気』がベストセラーになり、注目を集めている。人間の心を、原因よりも目指す目的から分析し、目的に向かって行動できるように勇気づけるのが特徴。例えば、ダイエット願望が強い人を「太っていることがトラウマ」と分析するのではなく、「やせることで自分に自信を持ちたい」ととらえる。