「失敗しない私」という高い理想にしがみつく

 「完全主義」といわれてもピンとこないかもしれません。一般に完全主義者といえば、仕事でも私生活でも「ビシッと決めないと気が済まない人」というイメージがあります。「それに引き換え、私なんか失敗も多くて、完全主義なんて程遠い」と思う人もいるでしょう。

 ここでいう「完全主義」とは、実際の行動というより、ココロの中の性質を指しています。無意識のうちに思い描いた完全な理想像がココロの奥にあり、そこからかけ離れた現実の自分を、受け入れがたいと感じてしまう、そんな性質です。

 例えば、料理をしていて鍋を焦がしてしまったとしましょう。「あー、やっちゃった……」ぐらいなら誰でも思いますが、ココロの中で完全を求める気持ちが強い人は、「焦がした」という現実をあり得ることとして受け入れられません。「料理も掃除もパーフェクトにこなす私」のような高い理想がココロの奥底にあり、そこから外れた姿はすべて「価値のないこと」と否定したくなるのです。

 少し厳しい言い方をするなら、そんなふうに失敗を受け入れないことで、空想の産物にすぎない「理想の私」が、まるで「本当の私」であるかのような気分に浸っているともいえます。でも「ワタシ、失敗しません」なんて、テレビドラマならともかく、現実にはあり得ないことですから、これは一種の現実逃避なのです。

 つまり、自己嫌悪に苦しむ人は、失敗に苦しんでいるのではありません。失敗という現実を受け入れられないから苦しい。「完全な私」という高すぎる理想が、現実を受け入れがたくしているのです。

 レッスン1では、自己嫌悪の奥に潜む「完全主義な自分」を探してみましょう。何か失敗をしたとき、ココロの中で「いつもダメな私」「こんなはずじゃないのに」などと自分を責める声がわいていませんか? それがあなたの中の完全主義者。自分を卑下する気持ちは、完全主義のココロから生じるのです。

Lesson1 「理想の自分」にとらわれて今の自分を嫌っていませんか?
自己嫌悪に陥りやすい人は、ココロの奥に高すぎる理想像を抱いていることが多い。そして、現実の自分が受け入れられなくなってしまう。「自分が嫌い」と感じる人は、高すぎる理想を求めていないだろうか。