「ほめる」ことで勇気を見失ってしまうことも

 さて、もう一つ大事な話があります。「勇気」と「ほめる」の違いについてです。

 人の潜在的な力を伸ばすには、ほめることが有効だとよくいわれます。だから、みなさんの中には、「ほめてもらえれば、勇気が出てくるのに」と思う人がいるかもしれません。

 結論からいうと、人は、ほめられても勇気を発揮できるようにはなりません。むしろ人の評価を気にして、ほめに依存するようになってしまいます。

 「ほめる」とは、親や先生、上司など、目上の人からの「評価」です。ほめられることを行動の指針にしていると、評価者の目を気にして行動する習慣が身についてしまいます。

 また、ほめる言葉は通常、「うまくいった結果」に対して与えられます。失敗したらほめてもらえません。つまり、ほめるという行為は「失敗はダメ」と伝えることになるのです。実際、成績が良いことをほめられて育った子どもはしばしば、失敗を恐れるあまり、前に踏み出す勇気を見失ってしまいます。

 レッスン2で、自分の「ほめ依存度」を振り返ってみましょう。上司から頼まれた仕事を提出したとき、あなたは「よくやった」とか「いい出来だ」といったほめ言葉を期待していませんか? もし、そういう言葉が出てこないことでイライラしたり、不安になったりするなら、ほめ依存気味かもしれません。

 ほめ依存を脱するには、勇気を育て、伸ばすこと。次号は、その方法をお話しします。

Lesson2 「ほめ」を求めて行動する「ほめ依存」になっていない?
「ほめてもらう」ことを行動のよりどころにしていると、他人の評価ばかりが気になって、自分の中の「勇気」を見失ってしまう。ココロの中に、ほめに依存する気持ちがないかチェックしよう。ほめられないとイライラしたり不安になったりするようなら要注意だ。
星 一郎(ほし いちろう)
心理セラピスト
星 一郎(ほし いちろう) 1941年東京生まれ。東京学芸大学卒。子育てボランティア団体「わいわいギルド」代表。IP心理教育研究所所長。アルフレッド・アドラー博士が提唱した「アドラー心理学」を取り入れた子育て支援やカウンセリングを行う。近著は『話を聞ける子が育つママのひと言』。

取材・文/北村昌陽 構成/平野亜矢(日経クロストレンド編集)写真/PIXTA

日経ヘルス2015年6月号掲載記事を再構成

この記事は雑誌記事掲載時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります