雑誌『日経ヘルス』から、「他人にはちょっと相談しにくい不調や病気」に関する情報を発信するこの連載。今回は「痔」がテーマ。痔が疑われる場合、今すぐできるセルフケアから、根治を目的に行う「日帰り手術」まで、ぐんとラクになった痔治療の情報を紹介する。
【上編】から読むなら ⇒ 「もしかして痔?」と思ったら 悪化させない4つの心得
出血や痛みには市販薬 タイプ別漢方薬で治ることも
痔に使える市販薬の主な作用は、止血と便通の改善だ。今ある症状に体質を加味して選ぶ漢方薬と、症状だけで選べる西洋医学の軟膏や座薬、便秘薬などがある。医療機関を受診した場合も、軽症から中等度の痔であれば、これらの薬が処方される。
「いぼ痔の出血には槐角丸(かいかくがん)、便通を整えながらいぼ痔のうっ血をとりたいときは乙字湯(おつじとう)。血行の悪さがある人には桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)。加えて便秘もある人には、桃核承気湯(とうかくじょうきとう)を処方することが多い」とマリーゴールドクリニックの山口トキコ院長は話す。
頑固な便秘には、マグネシウムの浸透圧作用で腸管に水を引き出す塩類下剤もよく効く。「妊婦や高齢者も安心してのめる薬なので、長期間使ってもかまわない」(こじま肛門外科三宮フラワーロード診療所の野村英明院長)。
一方、成城漢方内科クリニックの盛岡頼子院長は「暑がりでのぼせがある人の痔出血には、熱を冷ます黄連解毒湯(おうれんげどくとう)、貧血ぎみで冷え性の人の痔出血には芎帰膠𦫿湯(きゅうききょうがいとう)がいい」という。
脱肛ぎみの人には、不足したエネルギーを補うことで下垂感を止める補中益気湯(ほちゅうえっきとう)が効果的。
体力が低下したあな痔の人には、膿を出すパワーを補うとともに組織再生を促し、治りを良くする千金内托散(せんきんないたくさん)がお薦め。
切れ痔や、外痔核の血豆の痛みにはステロイド軟膏がいい。いずれも1週間ほど使ってみて効果が得られなければ、肛門科で診察してもらおう。
痔の症状全般と漢方薬
・いぼ痔の出血
槐角丸(かいかくがん)
・いぼ痔のうっ血
乙字湯(おつじとう)
・うっ血、便秘
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
・冷え&出血
芎帰膠𦫿湯(きゅうききょうがいとう)
・のぼせ&出血
黄連解毒湯(おうれんげどくとう)
・脱肛(だっこう)
補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
・あな痔
千金内托散(せんきんないたくさん)
次のページから、いぼ痔、切れ痔、そしてあな痔それぞれの手術法を説明します。中には切らない治療もあるので、ぜひチェックして。