雑誌『日経ヘルス』から、「女性ならではの不調の解消・病気の予防」に関する情報を発信するこの連載、初回は「腹部のガス」を取り上げます。たまって苦しい、でも人前では出せないし……。多くの女性が抱えるガスの悩みには、空気の飲み込みやストレス、冷え、食事などが関係しています。ガスはなぜたまるのか、原因をしっかり解説します。

 おなかが張る、ゴロゴロ鳴る、人前でおならが出てしまいそう……。多くの女性を悩ませる腹部のガス。そもそもガスはなぜたまるのか。

(イメージ画像)おなかにガスがたまって苦しい様子

 「ガスのほとんどは口から飲み込んだ空気。私たちは飲食を通して気づかないうちに多くの空気を飲み込んでいる。例えば10mlの水を飲むと、その倍近い約18mlの空気が胃に入るという報告もある」と広島大学病院感染症科の大毛宏喜教授。

 胃に入った空気の一部はゲップとして外に出るが、残ったものは下降して腸のガスになる。「飲み込んだ空気の約8割は窒素。これは酸素などと違って体内で消えてなくならないため、腸内ガスになって、おならとして外へ出る」(大毛教授)。つまり、飲み込む空気の量が多いほど、ゲップやおなかにたまるガスも増える。これが「呑気症(どんきしょう)」と呼ばれる症状だ。

おなかのガスの大半は、飲み込んだ空気
 飲食の際に飲み込んだ空気が胃に入る。一部はゲップで外へ出るが、残りは腸に移動する。大腸では、腸内細菌が食べ物のカスを分解する際、硫化水素などの臭いガスを発生させることが。便秘だとこの状態がひどくなり、においも強くなる。

飲食をすると……
胃…飲み食いの際に空気も入る(酸素2:窒素8)
大腸…腸内細菌による発酵(硫化水素、インドールなどが発生)
肛門…99%は無臭の成分(窒素、酸素、二酸化炭素など)、
   1%が臭い成分(硫化水素、インドール、メチルメルカプタンなど)となり体外へ

 どんな人が空気を飲み込みやすいのか。早食いなどでも飲み込む量は増えるが、東北大学病院心療内科の福土審教授は、「不安が強く、ストレスを感じやすい人は、無意識のうちにたくさんの空気を飲み込む傾向がある。このような人の中には、便秘や下痢を繰り返す『過敏性腸症候群(IBS)』の人も少なくない」と話す。

 冷え症で胃腸が弱い人もガスが増えやすいという。「腹部が冷えて腸がスムーズに動かないため、ガスがたまりやすくなる」と漢方に詳しい吉祥寺東方医院顧問の三浦於菟医師。通常、腸はかなりの速さで動いているが、それを意識することはない。ところが、冷えのために蠕動(ぜんどう)運動がゆっくりになると、逆に腸の動きを自覚することがあるという。「おなかの張りと一緒に『腸がモコモコ動く』などと訴える患者さんも少なくない」(三浦医師)

 一方、便秘のときなどは腸内に滞留した便からガスが発生する。また、ちょっと意外だが、便秘にいいはずの食物繊維がガスの原因になることも。「食物繊維の種類によっては人に合う、合わないがあり、なかには腸内発酵が盛んになりすぎてガスが増えることもある」と大毛教授。

 なお、腸内ガスの成分の99%は無臭だという。「呑気症の人に多い窒素は無臭。におうのは残りの1%で、腸内細菌による発酵の結果、発生する。代表的なのは硫化水素やインドールなどで、これらが多いかどうかでおならのにおいが決まる」(大毛教授)。

 このほか、長時間座ったままだったり、体を締め付ける衣類を着ていたりすると、腸を圧迫してガスがたまることに。さて、あなたのガスの原因は? 次ページでチェックしてみて。