コントロールできないと感じたら、専門家に相談を
食べているときに「おいしい」と思えず、食べ過ぎが止められなくなってきた、そう感じたら早めに専門家に相談をしたい。
「誰もがときには食べ過ぎることがある。食べてしまった、と一時的には後悔しても、楽しく食べられてよかった、と肯定的にとらえられれば大丈夫。ただ、食欲の制御が難しくなり、吐く目的で家にあるものを手当たり次第に食べるような行為が習慣化すると、摂食障害の可能性が高い」と、牧野クリニック診療部長の牧野真理子医師。
摂食障害とは、食行動に異常が起きる心の病気で、極端に食事を減らす「拒食タイプ」と、大量に過食して吐いたり下剤を使って出す「過食タイプ」がある。長期間続くと、自責感からうつ病になったり衰弱して突然死することも。「治療は数年単位でかかることが多いが、早期に受診すると1年ほどで治るケースもある」(牧野医師)。
過食タイプの場合、吐くことによって飢餓感がさらに強くなるので「吐かない」ことをまずは目標にする。ストレス源の出来事や吐いた時間などの行動記録をつけてもらい、過食するタイミングを明らかにする。「例えば会社から帰る前にコンビニに寄ってたくさん食べ物を買う人は、会社を出る前に抗うつ薬をのむことによって、過食の衝動を和らげることができる」(牧野医師)。
こんな自分はダメ、という自己肯定感の低さが患者さんの共通点だそう。「カウンセリングで自らのいいところを見つけ、近い将来の目標について考えるなどして、自己肯定感を高めていくことによって、少しずつ改善していく」(牧野医師)。
メンタルレスキュー協会理事長
医師、牧野クリニック診療部長
取材・文/柳本 操 写真/PIXTA 構成/太田留奈(日経BP経済メディア編成部)