疲弊した脳がエネルギーを欲するから、食べる

 そもそも食べ過ぎてしまう背景には、「目には見えない脳の疲労がある」と話すのは、メンタルレスキュー協会理事長の下園壮太さん。

 私たちは、食べ過ぎてもよいのは運動をしてたくさんカロリーを消費したときだけ、と考えがちだが、下園さんは「ストレスがかかったときにも精神疲労によって脳が多くのエネルギーを消費している」と話す。「怒りや不安はそれだけで多くのエネルギーを使う。幼い子どもはわーっと叫んだり泣くことによって発散できるが、大人はそれができないので、感情をぐっと抑え込む。このとき脳は、さらに多くのエネルギーを消耗する」(下園さん)。

 ストレス時に甘いものが欲しくなったり、食べてストレスを発散したくなるのは、脳がエネルギー源である糖を欲するからであって、人間の本能としてごく自然なこと。罪悪感を持つ必要はない。

 「私自身も、講演など緊張を強いられるときにはチョコレート1箱をたいらげる」(下園さん)。

 むしろ心配すべきは、「食べたことを責め、食欲を我慢できない自分に自信を失う」こと。「自分を責め、自信を失うとさらに不安やイライラが拡大し、脳の消耗が進んでしまうという悪循環が起こってしまう」と下園さん(下図)。

 食欲は本能的なものだから、「食べない我慢」はイライラを増幅させるだけ。「疲れてクタクタなのに、寝ないでいることを強いられるくらい、ストレス時の食欲のコントロールは難しいと自覚したい。ストレスは目に見えないからこそ、自分で客観的に『今、しんどいんだな』と分かってやることが大切」(下園さん)。

 でも、やっぱり食べ過ぎることがとてもイヤ──そんなときは?「脳にお疲れさま、というぐらいの気持ちでおいしく味わうこと。また、食欲増加の根本にあるストレスと向き合うことも必要」(下園さん)。

 なんとなく詰め込むように食べている、という人は、しっかり味わって食べてみよう。幸せを感じることで、前向きなエネルギーチャージができるはず。