読者にも悩みの声が多い首の凝りや痛み。慢性化すると頭痛やめまい、うつ症状の引き金になる厄介な症状です。しかしその大半は姿勢の見直しで改善すると専門家は指摘します。

・悪い姿勢が引き起こす首の痛み 慢性化するとうつ症状も←今回はココ
・たたく・もむはNG 首の痛みはストレッチで解消しよう

首の痛みの大半は「悪い姿勢」が要因

 私は肩こりがあるけれど首は何ともないという人はまずいない。「一般的に『肩』と呼ばれる部位は、解剖学的には実は首。肩こり=首こりといってよい」とお茶の水整形外科機能リハビリテーションクリニックの銅冶英雄院長は語る。「頸椎は7つの骨が重なり頭部を支えている(下図参照)。その骨のクッションとなる椎間板の中にある髄核という組織のズレにより椎間板が変形し、周囲の組織が損傷され、痛みとして感じられると考えられる」(銅冶院長)。

■頸椎の「クッション」のズレやつぶれが凝りや痛みの原因に
■頸椎の「クッション」のズレやつぶれが凝りや痛みの原因に
頸椎は椎骨と呼ばれる7つの小さな骨が連なってできており、頭を支えている。骨と骨の間にはクッションの役割を持つ椎間板があり、その中央部には髄核と呼ばれるゼリー状の組織がある。悪い姿勢などで髄核がずれると、髄核を取り囲む線維輪という組織が傷み、首の痛みになる。髄核のずれが酷くなると、椎間板がつぶれ周囲の組織を傷つけ、頸椎への負担が増す。ひどくなると椎骨の中を通っている神経を圧迫し、手足にしびれが出ることも。

 一方、首の凝りや痛みは背中から、と指摘するのは東京医科大学整形外科の遠藤健司講師。「背中上部には僧帽筋という大きな筋肉や、数種の深層筋が肩関節から首にわたり付いており、頭を支える役割も。これらが疲労すると首に凝りや痛みが出やすくなる(下図)」(遠藤講師)。

■背中の大きな筋肉「僧帽筋」が緊張すると首にも凝りや痛みが
■背中の大きな筋肉「僧帽筋」が緊張すると首にも凝りや痛みが
首から肩、背中にわたり広い範囲を覆うように付いているのが僧帽筋。その下の肩甲挙筋なども首と肩甲骨の動きに関係している。猫背などの悪い姿勢を取り続けると、これらの筋肉が常に緊張状態になり、肩のみならず首にも凝りが出やすくなる。背中の左右に位置する肩甲骨を動かすことで僧帽筋などの緊張が和らぎ、凝りや痛みの緩和に効果的。

 これらを引き起こす最大の要因は「悪い姿勢」にあると2人は口をそろえる。「パソコンの画面に熱中すると、無意識にあごを突き出す人は多い。これが髄核のズレを誘発する」(銅冶院長)。遠藤講師も「首は体重の10〜15%ある頭を支えている。スマホなどで前かがみになり首が前傾すると、物理学上、この負荷が数倍にもなる」と話す。