PMSにも更年期症状にも使う5大漢方

 漢方に詳しい武田教授は、「一番よく使うのはほてりやイライラなどの不定愁訴に効く加味逍遥散(かみしょうようさん)。月経異常にも効果があり、タイプを選ばずに使える女性のための代表処方」という。

 他にも、むくみやめまいに効果がある当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、冷えのぼせに効く桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、のぼせや便秘を改善する桃核承気湯(とうかくじょうきとう)、イライラを鎮める抑肝散(よくかんさん)がよく用いられる。加味逍遥散も含め、これらが5大漢方処方と呼べる位置づけだ。

 なお、激しい怒りが急にこみ上げてくるようなときは甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)をその場でのむと早く効くという。「気持ちがほわーんとして落ち着く。お守り代わりに携帯しておくのもいい」(武田教授)。漢方はホルモン剤との併用も可能。HRTと一緒にのんでいる人も多いそうだ。

■PMSにも更年期症状にも使う5大漢方処方

イライラやほてりのつらい人に加味逍遥散
のぼせ、肩こり、冷え、疲れやすさ、イライラ、不安、月経不順、月経困難などに効果的。気血水に効く生薬がバランスよく入っており、女性の不調によく用いられる。

むくみやめまい、頭痛、月経不順などに当帰芍薬散
体力があまりない女性の貧血、めまい、耳鳴り、頭痛、むくみ、疲れやすさ、月経不順、月経困難、不妊などに。体内の余分な水分をとったり、血を巡らせたりする作用がある。

のぼせや便秘、精神不安のある人に桃核承気湯
比較的体力がある女性ののぼせ、便秘、頭痛、めまい、肩こり、冷え、不安、不眠、月経不順、月経困難などに効く。血の巡りがよくない「瘀血」(おけつ)の人に向く。

がっちりタイプののぼせや頭痛に桂枝茯苓丸
体力がある人の冷え、のぼせ、頭痛、肩こり、めまい、月経不順、月経困難、おりものなどに効果的。「瘀血」タイプで、がっちりした体格の赤ら顔の人に適している。

イライラ、発散できないストレスに抑肝散
神経の高ぶり、イライラ、怒り、落ち着きのなさ、不眠などに効果がある。もともとは子どもの夜泣きに効く漢方。効きが早いので、症状が出てから頓服してもいい。

PMSが重症な人はSSRIが第一選択に
重症のPMSや精神症状が強いPMDDの場合は、抗うつ薬の「SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)」が効く。「PMDDはうつ病の一つとも捉えられている。日頃からSSRIをのみ続けたり、月経前の2週間だけのんだりする方法がある」と東京歯科大学市川総合病院産婦人科の小川真里子准教授。
武田 卓
近畿大学東洋医学研究所 所長・教授
武田 卓 産婦人科医。東北大学産婦人科客員教授も務める。「PMSに悩む女性は多いが、治療を含め、十分な対策がとられていない。まずはPMSについて知ること。職場や社会での認知度を上げていくことも大事です」。
小川真里子
東京歯科大学 市川総合病院産婦人科 准教授
小川真里子 産婦人科医。専門は女性医学。「月経前には誰でも何らかの症状が出やすく、PMSは身近な不調。例えば米国では女性が『今、PMSなの』と言えば、ボーイフレンドにも通じるくらい一般に認知されています」。

取材・文/佐田節子 構成/黒住紗織(日経BP総研) イラスト/三弓素青 イメージ写真/PIXTA