PMSと更年期のためのホルモン療法

 PMSも更年期症状も治療の基本は同じ。ホルモン療法と漢方が柱になる。

 まずはPMSのホルモン療法から──。排卵を止める低用量ピルをのむと、プロゲステロンの分泌が抑えられ、PMSが改善する。「ただし、身体症状だけでなく精神症状も改善すると認められているのは、現状ではドロスピレノンというタイプのプロゲステロンが入った『ヤーズ』という製剤だけ」と武田教授。怒りやイライラなどの精神症状を和らげる作用が認められている。

 PMSは保険適用になっていないが、月経困難症を伴っていれば保険が利く。自費の場合は1カ月で8000円程度。

 一方、更年期症状の場合は、低用量ピルより少ない量の女性ホルモンを補う「ホルモン補充療法(HRT)」が効く。「特にホットフラッシュの改善効果が高い。5年以内の使用なら副作用の心配はまずない」と武田教授。骨量低下や動脈硬化の予防、肌の潤い保持などの効果も期待できる。

 漢方は症状に応じて処方されるので、PMSにも更年期症状にも同じものがよく使われる。

■ホルモン療法は「活性の強さ」で使い分け

PMSには低用量ピル
 同様にエストロゲンとプロゲステロンを補うが、HRTに比べるとホルモン活性は強い。排卵を止めて、PMS症状を招くプロゲステロンの分泌を抑える。月経痛などの月経困難症にも効果的。避妊効果もある。

低用量ピルでは「ヤーズ」が精神症状にも効果
低用量ピルでは「ヤーズ」が精神症状にも効果
PMS及びPMDDを併発する月経困難症患者48人(20〜49歳)が「ヤーズ」を1日1錠服用。6周期後、怒り・イライラの症状が明らかに改善した。(データ: J Obstet Gynaecol Res; 41,10, 1584-1590, 2015)

更年期にはホルモン補充療法(HRT)
 ごく少量の女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)を補う治療法。卵巣機能の低下による女性ホルモンの減少カーブをゆるやかにして、症状を緩和する。のむ、貼る、塗るの3タイプがある(下の写真参照)。

(写真左から)のみ薬、貼付剤、塗り薬
(写真左から)のみ薬、貼付剤、塗り薬