ストレスが多く、いつも不安。気力が低下し、集中できない……。こんな症状はうつの前段階かも? 不安からうつに進んでしまう原因や、血液検査でうつかどうかが分かる新しい診断法を紹介します。

じわじわ続くストレスが、うつをつくる

 「最近、気分が落ち込む、仕事に集中できない、不安で落ち着かない……。もしかして、うつ病?」――そんな悩みを抱えている人も多いのでは。まずはうつ病チェックをしてみよう。

【CHECK!】あなたは大丈夫? うつ病チェック
■ 気分が落ち込む、または 悲しくなる
■ 物事に対してほとんど 興味がない、楽しめない

□ あまり食欲がない、または食べ過ぎてしまう
□ なかなか眠れない、または寝すぎてしまう
□ そわそわしていつもより動き回る、または話し方や動きがゆっくりになる
□ 疲れやすく、気力がない。 何をするのも面倒だ
□ 自分はだめな人間だ、または周りに申し訳ないと感じる
□ 集中するのが難しい、または優柔不断だ
□ 死にたいと思うことがある

上記の■は「抑うつ気分」と「喜びの消失」を表す。これらのうち少なくとも1つに該当。さらに上記の□の症状も合わせて5つ以上に当てはまる状態が2週間以上続く場合、「うつ病」と診断される。うつ病は不安を伴いやすく、特に初期は強い不安に駆られることが多い。
参考・企業のストレスチェックも
 2015年12月から、50人以上の従業員がいる事業所では年に1回の「ストレスチェック」が義務付けられた。改正労働安全衛生法によるもので、働く人の心の健康を守り、うつ病などの病気を未然に防ぐことが目的。厚生労働省のサイト「5分でできる職場のストレスセルフチェック」でチェックができる。

初期症状として多いのは「不安」

 上記のチェック項目にあるように、うつ病では気分の落ち込みや喜びの消失などが見られるが、初期症状として多いのは不安だという。「不安からうつ病に進む人はとても多い。不安が強いと眠れなくなったり、疲労がたまったりして、うつ病になりやすくなる」と帝京大学医学部精神神経科学講座の功刀浩教授。

 もっとも、うつ病にはならず、強い不安だけが続くことも。これは「不安障害」と呼ばれる。

不安はうつの入り口。放置すると本当のうつ病に
不安はうつの入り口。放置すると本当のうつ病に
ストレスが続くと、心配や緊張で落ち着かない「不安」が生じる。この状態を放置していると、いずれうつ病に進むことが多い。うつを伴わない場合は「不安障害」と診断される

 川村総合診療院の川村則行院長は、「不安障害と不安を伴ううつ病は区別して扱ったほうがいい」という。関係する脳内の神経伝達物質が異なるからだ。不安や焦燥、緊張といった感情は、脳内のセロトニンという物質の機能低下が関係している。一方、憂うつや意欲の低下にはノルアドレナリン、喜びの消失にはドーパミンの機能低下がある。

不安とうつは、関係する神経伝達物質に違いがある
不安とうつは、関係する神経伝達物質に違いがある
うつ病にはセロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンの機能低下が関係している。図はうつ病の各症状に関与する脳内の神経伝達物質と治療によって症状が改善していく順番を表している。(データ:精神経誌;100,12,1074-1080,1998より改変、Clinical Neuroscience;22,2,202-207,2004)

 つまり、不安障害にはセロトニンが関わるが、うつ病には3つの物質全部が関与する。「両者を区別しておくと薬を適切に選択でき、治療がうまくいく」と川村院長。次のページでは薬物治療について紹介する。