一時的な不眠には、心身を整える漢方薬を。眠れないことに対する不安が大きくなった慢性不眠には睡眠効率を上げる「睡眠日誌」が効果的だといます。それぞれの実践法を詳しく紹介します。

前回記事・あなたの不眠、本当の原因は? 治すための基礎知識

「急性不眠」は漢方薬で治す

 急性不眠は漢方薬を使うと早く治せる。「漢方薬は覚醒度を落として眠らせるのではなく、心身のバランスを整えて眠れる状態をつくる」と東邦大学医療センター大森病院東洋医学科の田中耕一郎准教授。そのため、不眠だけでなく、日中の不調を改善する効果も高い。

 女性のストレス性不眠でよく用いられる薬は主に4つ。

 「ストレスで心が高ぶり、そのことばかり考えて眠れない人には抑肝散(よくかんさん)や柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)。疲れやすくイライラやほてりがある人には加味逍遥散(かみしょうようさん)、仕事の重圧で悩みがちな人には加味帰脾湯(かみきひとう)が合う」と田中准教授。

 抑肝散は興奮による筋緊張をとる効果が高いので、安静にすると脚がむずむずして、じっとしていられなくなるレストレスレッグス症候群にも効く。

 肩から首にかけて冷えて眠れない人には葛根湯(かっこんとう)、下半身が冷えて頻尿になった人には体を芯から温める牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)が効く。

不眠に効く漢方薬

●抑肝散(よくかんさん)
カンの強い子どもの夜泣きを鎮める薬として知られる。不満をため込んだ人の筋緊張をゆるめ、怒りをコントロールしやすくする。歯ぎしりやあごの食いしばりをゆるめる効果も。

●加味逍遥散(かみしょうようさん)
疲れてイライラし、テンションが上がってほてる人に合う。神経を鎮めるとともに体に潤いを与える。月経前や出産後、更年期など体の滋養分が消耗し気持ちが高ぶるときに効く。

●加味帰脾湯(かみきひとう)
仕事で無理をしたり、あれこれ思い悩んだりして不安になったり、責任感の強い人に合う薬。胃腸の働きを高めながら心を安定させる滋養分を補い、心身を回復させる。

●葛根湯(かっこんとう)
一般にはカゼの引きはじめに用いられる、血行を良くして寒気をとる薬。疲れてエネルギーが不足したために血行が悪くなり、肩から首にかけて冷えや凝りを感じる人に。

●牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)
加齢や働きすぎによるパワーダウンで冷えきった体を芯から温める。冷えが下半身で特にひどく、ひざや腰が痛んだり、夜間の頻尿で何度も目が覚めたりするときに効果を発揮。