1日30分以上の早歩きで肝機能が改善する

 脂肪肝の改善には、少しキツイと感じられる運動も重要。体重が落ちなくても、運動がNASHの誘因の一つと考えられる炎症物質の低下をもたらすことが、最新の研究で分かった。効果が得られる目安は、汗がにじむほどの運動を1日30分以上続けることだという。

 「運動を組み合わせることで、脂肪肝を改善する効果はよりアップする」と船津医師。これを示したのが2015年3月に肝臓専門誌に掲載された筑波大学の研究。正田純一教授らのグループは、NAFLDの患者を対象に、早歩きなど少し強めの運動を1日に30分以上行ってもらったところ、体重や腹囲に変化はなくても、肝臓の症状が改善すると報告した(下グラフ)。

運動で脂肪肝の指標となる数値が改善
運動で脂肪肝の指標となる数値が改善
169人の男性(BMI25~40)に、やや強めの運動(速歩など)を3カ月行ってもらった。速歩の効果は多くの人に現れたが、とくに週に250分以上を目安に歩いた群では体重に明確な変化はなくても、肝臓の脂肪が減り、脂肪肝の進行の指標となる血液中の線維化マーカーなどの値も低下した。(データ:Hepatology;61,1205-1215,2015)

1日6時間以下睡眠は脂肪肝が進む可能性

 睡眠も重要。睡眠の状態が悪くなると、血糖値のコントロールが難しくなるなどは知られており、脂肪肝と糖尿病は併発することが多い。横山教授は「肝機能と睡眠の関連を健診受診者755人で調べたところ、睡眠不足は肝機能の状態を悪くすることが分かった」と話す。

 横山教授らの研究によると、睡眠時間が6時間以下では脂肪肝のリスクが高まるという。「睡眠時間が短いと、食欲をつかさどるホルモンのグレリンやレプチンのバランスが崩れて食欲が亢進しやすい。脂肪肝予防には十分な睡眠も必要」(横山教授)。

 残念ながら、脂肪肝の予防・改善に「これだけやれば」という方法は存在せず、「脂肪肝対策に王道なし」(横山教授)。下記で紹介する脂肪肝を予防&改善する心得を参考に毎日、コツコツと食事・運動・睡眠の改善に取り組むことだ。

脂肪肝を予防&改善する心得7

●1日30分以上の早歩きをする
●抗酸化成分が豊富な野菜・果物を食べる
●ブラックコーヒーを1日2杯以上飲む
●総カロリー摂取は適度に抑える
●BMIを25以下にキープする
●ストレスをためない
●1日6時間以上の睡眠をとる

船津和夫
三越厚生事業団 三越診療所 医師
船津和夫 専門は消化器(肝臓)。慶應義塾大学医学部卒業後、東京歯科大学助教授などを経て、三越総合健診センター所長に就任。12年6月から現職。「肝機能の値が気になる人は、2年に1度は腹部エコー検査を受けて」。
横山裕一
慶應義塾大学 保健管理センター 教授
横山裕一 慶應義塾大学医学部卒業後、米国マウントサイナイ大学留学を経て、18年より現職。「閉経後の女性の体は、ホルモンバランスの変化が起こり、脂肪肝になりやすい。食事、睡眠、運動習慣を見直すことで防ぎたい」。

取材・文/荒川直樹 イラスト/三弓素青 写真/PIXTA

日経ヘルス2015年7月号掲載記事を再構成

この記事は雑誌記事掲載時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります