脂肪肝の患者は国内に約1000万人いるといわれます。その1〜2割は慢性的な炎症を起こす非アルコール性脂肪肝炎(NASH)という病気に移行しますが、自覚症状はありません。NASHになると命を脅かす肝硬変や肝がんのリスクが高まります。早期発見が重要です。

肝臓に脂肪がたまるのは肥満や過食が原因

 脂肪肝は、飲みすぎ、食べすぎ、運動不足などが原因で肝臓に脂肪がたまり、“フォアグラ”状態になる病気。

あなたの脂肪肝のリスクをチェクしてみよう
□ BMIが25以上だ
□ 閉経している
□ 糖尿病だ
□ 中性脂肪値が高く、近年急激に体重が増えた
□ 週に1回以上運動をする習慣がない
□ 十分に睡眠時間がとれない
□ 体がいつもだるい
※3つ以上該当する場合は要注意。健康診断の血液検査の結果などを確認してみよう。

 飲酒習慣が原因のアルコール性と、飲酒しなくても発症する非アルコール性(NAFLD)に分けられるが、これまで医師が注意喚起を行ってきたのは主に前者だった。

 大量飲酒の場合、肝臓に慢性炎症が起こり、やがて肝硬変、肝がんを発症するリスクが高い。対してNAFLDは、症状は脂肪の蓄積にとどまると考えられていたからだ。

 この常識に疑問が呈されたのは80年代以降。三越診療所の船津和夫医師は「飲酒習慣がないのに肝硬変を発症する例などの研究が進み、NAFLD患者の1〜2割が肝硬変や肝がんに移行する、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)になることが分かってきた」と話す。

 肝臓は、食事でとった脂肪分を中性脂肪に変えて全身に供給するが、「運動不足などで消費するエネルギーが減ると、中性脂肪が肝臓にたまる。これが脂肪肝の状態」(船津医師)。このとき自覚症状はほぼない。

処理しきれない脂肪が肝臓にたまる
処理しきれない脂肪が肝臓にたまる
処理が間に合わないほどの遊離脂肪酸が送り込まれ、エネルギーなどに変えて消費できなくなると、肝臓は作った中性脂肪をため込む。肝臓は食事などで摂取した脂肪が分解された遊離脂肪酸を中性脂肪に変え、肝臓から体の組織に脂肪を運ぶVLDL(超低密度リポたんぱく質)に取り込ませて血液中に送り出す。(写真提供:船津医師)