脂肪肝が進行するとNASHになる

 「脂肪肝からNASHに移行するかどうかは体内の炎症性物質や糖代謝の変化などが複雑に関与しており、予測は難しい」と慶應義塾大学保健管理センターの横山裕一教授。NASHに移行した場合、黄疸(おうだん)や全身の倦怠感などを自覚する人もいるが、症状を自覚したときには、肝硬変や肝がんに至るケースも多いという。

脂肪肝 ⇒ NAFLD ⇒ NASH ⇒ 肝硬変/肝がんの恐れ
脂肪肝 ⇒ NAFLD ⇒ NASH ⇒ 肝硬変/肝がんの恐れ
脂肪肝は食事や運動で改善が可能。NASHになると健康な肝臓に戻すことは難しくなる

50代女性のNASHは2人に1人が肝硬変に

 NASHは、無症状で進む怖い病気だ。放置すると肝細胞が死滅・減少し、線維組織に置き換わる「線維化」が起こる。それが進んだ結果、肝臓が硬く変化し、正常な機能が失われた状態の「肝硬変」に至る。

 NASHの経過に関する臨床研究では、5年で4人に1人、10年で半数に線維化が進行していることも分かってきた。さらに「肝がん」を発症する率は年2〜4%とされる。

 NASHになってしまうと、薬物治療はビタミンE剤などに限られ、健康な肝臓に戻すことは非常に困難となる。また、肝がんに至った場合、進行具合によって異なるものの、切除や肝移植などが主な選択肢となる。

●肝がんの治療には「切らない治療」もある
肝がんの治療法は、外科的な肝切除、肝移植などが主な選択肢となる。ただ、がんが3cm程度以下なら、ラジオ波熱凝固療法などの切らない治療も適用になる。これは皮膚の外から肝臓に針を刺し、その先端にラジオ波を加えて「がんを焼く」治療だ。

●肝硬変の治療は症状の進行防止処置が基本
いったん線維化した肝臓組織を元の状態に回復させるのは難しい。治療は肝硬変で起こる貧血やビタミン不足を補いながら、線維化がそれ以上進まないようにする薬物療法。具体的にはビタミン剤などの投与だ。アルコール性の場合、禁酒で肝機能が改善するケースも。