エストロゲンの乱高下も関係する

 「月経時に片頭痛を起こしやすい人は、エストロゲンがほぼ出なくなる閉経後は頭痛の頻度が減り、痛みも軽くなることが多い」と話すのは牧田産婦人科の牧田和也院長。「ただし、更年期の間はエストロゲンの値が不安定なため、頻度が増えることも」(牧田院長)。

 一方、妊娠中はエストロゲンの分泌が高めで安定するため、片頭痛は起こりにくくなるが、出産後にホルモン分泌が元に戻ると再発し、育児ストレスや寝不足で妊娠前より起こりやすくなる人も。

 片頭痛の痛みのメカニズムはまだ解明されていないが、「ストレスなどにより頭の血管を取り巻く三叉神経が刺激され、痛み物質を放出し、それが血管を広げて炎症を起こし、頭痛を引き起こすといわれている」(五十嵐医師)。

片頭痛はエストロゲンとの関係が深い
片頭痛はエストロゲンとの関係が深い
22人の女性を対象に、3カ月間の頭痛日記で発作回数を調べた。片頭痛はエストロゲンの血中濃度が急減するときに起こりやすい。月経初日前後や排卵日直後は要注意。(データ:五十嵐久佳 診断と治療;90,6,877-882,2002および峯岸敬 日産婦誌;59,4,N-41,2007より改変)※ホルモン値は月経第1日目までの表示となっている
いつもと違う頭痛はすぐに受診をしよう
頭痛には何らかの病気が原因のものも。特にくも膜下出血や脳梗塞など脳の病気だと、命を脅かし時間を争う。これらは40歳以上でリスクが高まる病気だけに「いつもと違う痛みや今までなかったのに突然発症した場合は、すぐ頭痛外来か脳神経の専門施設で検査を」(牧田院長)。直ちに命にはかかわらないが甲状腺や鼻の病気にも注意を。

下記の症状は別の病気と関連するかもしれないので要注意!
□ 突然の激しい痛み⇒くも膜下出血
□ 日に日に痛みが強まる⇒脳腫瘍
□ 手足がしびれる、ろれつが回らない⇒脳梗塞
□ むくみや便秘、疲れがある⇒甲状腺疾患
□ アレルギーがあり、季節の変わり目に強い痛み⇒副鼻腔炎

 次回は片頭痛の人のための正しい頭痛薬の使い方について解説します。

五十嵐久佳
富士通クリニック(川崎市中原区)・東京クリニック 頭痛外来担当 医師
五十嵐久佳 北里大学医学部卒業。宮内庁病院第二内科医長、神奈川歯科大学附属横浜研修センター内科学講座教授などを経て2012年より現職。北里大学医学部客員教授兼任。日本頭痛学会理事・専門医。
牧田和也
牧田産婦人科(埼玉県新座市)院長
牧田和也 関西医科大学卒業後、慶應義塾大学産婦人科学教室入局。2008年より現職。婦人科領域では数少ない頭痛専門医。

取材・文/福田(渡邉)真由美 構成/黒住紗織 イメージ写真/PIXTA