人の名前が出てこない、「あれ、それ」が多くなった、度忘れが増えた。もしや認知症!?――あなたもそんな悩みを抱えていませんか。もの忘れの背景には病気などの原因が潜んでいることもあるのです。

「疲れ・ストレス型」が多い

 もの忘れが多く、認知症の心配をしている人もいるのでは。

 「40、50代で、もの忘れを気にして受診する人もいるが、このくらいの年代なら認知症以外の原因であることがほとんど」と東京医科歯科大学特任教授の朝田隆教授。牧野クリニック心療内科の牧野真理子医師も、「もの忘れが多くても、あとで『ああ、そうだった』と思い出せるなら認知症の心配はない」と言う。

病気でない「もの忘れ」の背景には……
加齢や疲労、睡眠不足、悩み事、ハードワークなどが重なると、脳もキャパオーバーになり、注意力や集中力が低下し、もの忘れを招く。病気ではなく、日常生活の中に原因があるこのタイプが一番多い。

 では、本当の原因は?

 「一番多いのは、疲れやストレスなどから一時的に頭の働きが落ちているケース。疲れているうえに悩みなどがあれば、誰でももの忘れが増える」(牧野医師)。

 加齢も影響する。「もの忘れには、複数の情報を一時的に脳にメモする『ワーキングメモリ(作業記憶)』の力が関わっている。これは普通、加齢とともに低下する」と公立諏訪東京理科大学・医療介護健康工学部門長の篠原菊紀教授(下グラフ)。

年齢とともに認知機能は低下する
1300人(6〜80歳)を対象に、言葉を逆から言うなど、ワーキングメモリを調べる6種類のテストを実施。縦軸のゼロが、テストの平均点を示す。40代ごろから点数はぐっと落ちるが、ばらつきが大きい。「年をとっても成績のいい人はいる。頭の使い方次第で認知機能の低下を防げる」と篠原教授。(データ:篠原教授)