悩んだり、イライラしたり、日々浮き沈みする心を穏やかにしたい……。そんな悩みに、心理カウンセラー僧侶の羽鳥裕明さんが寄り添い、仏教と心理学の視点からヒントをくれるこの連載。8回目は、「自分を変えたい」と思ったとき。誰もが一度や二度、心によぎるこの思いをかなえるにはどうすればいいのか、考えてみましょう。

「俳優になったつもり」で一歩を進めない自分に活を入れよう
「俳優になったつもり」で一歩を進めない自分に活を入れよう

 何かを始めたくなったときには、「まず、やってみよう」と明確な意志を持つことが大切、というお話を前回はさせていただきました。

 何かを始めたい、という思いの裏には、今の自分を「変えたい」という気持ちもあります。一歩前に足を踏み出し、変わりたい、そう思ったときに大きなヒントになるのが、仏教における「三密行(さんみつぎょう)」という教えです。

 三密とは、弘法大師空海が広めた、自らの能力を存分に発揮するための修行方法のこと。3つの密とは「身(行動)」「口(言葉)」「意(意識)」を表します。行動、言葉、意識。この3つが仏様と一体であるならば、誰もが仏になれる、という密教の教えが込められているのです。この教えによって密教のお坊さんは、印(いん)を結び(両手を合わせる合掌も、「印」の一つです)、口で真言(しんごん)を称え、心に仏様を感じて仏様をまね、なりきるのです。

【ミニ知識】人の悩みに関わる仏教用語の深い意味
三密業(さんみつぎょう)
「三密行」の「三密」とは、「身(行動)」「口(言葉)」「意(意識)」を意味します。行動と言葉、意識が仏様と一体であるなら、人は仏様のように心穏やかに生きることができる。人がその身そのままで仏になりたいとの願いを達成できるとする「即身成仏(そくしんじょうぶつ)」への方法です。こうなりたい、と願うときには、行動と言葉、意識の3つを実践してみましょう。