人間は自分が考えた通りの結果に帰着させる

 例えば、人間関係においてもこんなことがあります。

 相手に対する第一印象が「意地悪そうな人」であるとき、次に会ったときに感じた印象が違った場合、相手にどんなに親切にされても、「そんなはずはない」「意地悪な人に違いない」などと自分の第一印象を信じたくなってしまうことはありませんか。

 それと同じように、自分に対しても「自分は幸せになれないんだ」などと強く思ってしまったらどうでしょう。「素敵なパートナーを見つけて幸せになりたい」と考えて行動し、実際に素敵な人を見つけたのにもかかわらず、しばらくすると何となく不安になる。そして、わざと相手の嫌がることをして相手を怒らせてしまい、せっかく手に入れた幸せを自ら壊してしまう。そんなとき、すごくショックを受ける一方で「ああ、やっぱり自分は幸せになれないんだな」と、心のどこかでほっとしている自分がいたりもする。

 このように、恋愛の場合であれば、相手をわざと怒らせるようなことをしたり、仕事の場合であれば、なぜか単純なミスを繰り返してしまう。「壊れないでほしい」という意識とは裏腹に、「早く壊れて、自分を楽にしてほしい」という気持ちが、無意識的な行動を引き起こすのです。対人関係で、このように、わざと相手を困らせるような態度をすることを心理学では「試し行為」と呼びます。試し行為によって幸せが壊れ、寂しい思いをしながらも「ああ、やっぱり自分はうまくいかないのだ」と、自分の考えがいかに正しいかを証明しようとするのです。