相手はこれが「好き」と「変換」する

 相手が言っていることよりも自分が正しいのに、と思うとき、とりあえず私は「自分の経験が広がる」と前向きに切り替えてやってみることにしています。そして、どうせやるなら楽しんで行う。その結果、案外、新たな発見があるかもしれません。

 人間は自分の考えるやり方で行うほうが失敗の恐れがなく、自分が納得できるため、他人から言われたやり方を拒絶したくなるものです。否定することは簡単で、ダメ出しは誰にでもできます。でも、外から来るものを否定してばかりでは自分の枠から出られずに必ず成長の限界が来ます。「面白いからやってみよう」と、人生の新ネタにしてみようというくらいの発想もぜひ取り入れてみてください。

 理不尽なことを押しつけるとき、上司などはよく「これが正しい」とか「普通はこうする」といった言葉を駆使しがちですね。「こういうのが正しいんだ」と言われると、自分のやり方を否定されたような気がしてムカッとしたり、傷ついたりしてしまうもの。こんなときは、心の中で「相手は、こうするのが“好き”なんだな」と変換して受け止めるのもお薦めです。相手にとっての優先順位はここにあるのだ、と考えるだけでも、あなたの価値観やあなたが大切にしていることと相手の価値観を否定することなく余裕を持って接することができます。

 物事には二面性があります。大事なのはマイナスの面だけでなく、プラスの面を見つけること。何事にも感謝できるようになると心が強くなれます。

 ただし、上司やあなた自身も気づかずにパワハラになっていることもあります。あまりにもおかしな場合や状況が変わらない場合は、周囲に相談したりしてみてください。体調を崩したりしては元も子もありません。どうしても耐えられない場合は、思い切って転職などを考えるというのも一つの選択肢です。

今回のアドバイス
逆らうだけでなく、ときには探検家の気分で楽しんでみる
「私が正しい」と自分のやり方ばかりにこだわっていては、苦しいばかりで、新たな発見のチャンスもありません。急流をラフティングするような気分で、相手が言う方向に流されてみよう、と切り替えてみるのが、「理不尽さに抵抗する苦しみ」から解放されるコツ。探検家の気分で、この先にどんな景色が見えてくるかな、というワクワク感を忘れずに取り組んでみて。
羽鳥裕明
心理カウンセラー僧侶
羽鳥裕明 1968年生まれ。心理カウンセラー。真言宗智山派 僧侶。大学卒業後、9年間企業でエンジニアとして働いた後、31歳で得度し僧侶となる。悩みを抱える人の身近な存在でありたいという思いから、悩み相談の「駆け込み寺」を開設し、悩みごと相談を行う。著書に『悩みが消えるお坊さんの言葉』(サンマーク出版)
http://hatorihiroaki.com/

取材・文/柳本 操 写真/PIXTA