人間関係を「可視化」してみよう

 仏教において、「曼荼羅(まんだら)」という絵があります。いろいろな仏様がいろいろなところでそれぞれの役割を担っている。それぞれに自分の役割があり、それぞれが自分の役割を果たすことによって他の存在とつながり関係性が保たれている、という仏教の考えが、曼荼羅の絵には表されています。曼荼羅では、一番外側に敵対するヒンドゥーの神様も自分を支えている必要な存在として描かれています。自分にとって都合のいい人、悪い人はいるけれど、不必要な人かどうかは分からない、というのが仏教の考え方。ストレスになる相手だとしても、あなたをすごく成長させてくれる場合もありますよね。敵対している存在であっても、その人を決して否定せず、お互いの存在を認めるこの曼荼羅のように、実際にあなた自身を軸にし、人間関係図を作ってみましょう。

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曼荼羅(まんだら)
真言宗は密教の教えを説く宗派です。密教ではたくさんの仏様が存在し、観音様、お不動様、お地蔵様など、さまざまな仏様がそれぞれの役割を果たすと考えます。そんな世界を視覚的に表して関係性を示しているのが「曼荼羅」。姿形は違えど、「それぞれがそれぞれの場所で能力を生かす」ことによって世界のバランスを保っている、という考えを示しています。

 あなたを励まし安心させてくれるような、初めから100%で付き合いたい大切な人をあなたのすぐ近くに描き、一方、もしかしたら自分を成長させてくれるかもしれないが、「どうしても苦手な人」は遠いところに描きます。実際に描くことによって、自分の大切な存在に気づく一方、苦手だけど自分を支えている存在の一つであり、心理的には遠いところにいて、本来はそんなに強い影響を与える人ではない。こんなふうに、人間関係をしっかり明確にとらえることができる。すると、「苦手だ」という意識も軽くなっていくものです。周囲との付き合い方を目で見える形にすることで、心理的な関わり方の距離感をつかんでみましょう。

今回のアドバイス
苦手な人は自分にとってどの位置に存在する? 人間関係を図にしてみよう
テレビドラマ解説の人間関係図のようなものを、自分の性格や周囲の人の性格、自分が相手に求めていることや、相手が自分に求めていることなどを頭に思い浮かべながら、自分を主人公にして描いてみよう。そうすることで、自分と相手との関係性が客観的に見えてきます。可視化し、心理的な距離を置くことで、お互いに余裕を持って接することができるようになります。
羽鳥裕明
心理カウンセラー僧侶
羽鳥裕明 1968年生まれ。心理カウンセラー。真言宗智山派 僧侶。大学卒業後、9年間企業でエンジニアとして働いた後、31歳で得度し僧侶となる。悩みを抱える人の身近な存在でありたいという思いから、悩み相談の「駆け込み寺」を開設し、悩みごと相談を行う。著書に『悩みが消えるお坊さんの言葉』(サンマーク出版)
http://hatorihiroaki.com/

取材・文/柳本 操 写真/PIXTA

日経ヘルス2016年7月号掲載記事を再構成

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